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ISASニュース

「宇宙科学・探査ロードマップと各分野の将来計画」シンポジウム報告

No.399(2014年6月)掲載

 2014年5月8日午後、「宇宙科学・探査ロードマップと各分野の将来計画」と題するシンポジウムが、宇宙研の宇宙理学委員会、宇宙工学委員会、宇宙環境利用科学委員会の委員長名で、東京大学本郷キャンパスにて開催された。これは昨年の夏に内閣府の宇宙政策委員会から要請を受けて、三委員会が宇宙研執行部や関連研究分野などと協力し、「宇宙科学・探査のロードマップ」を作成したことに端を発する。この段階ではロードマップは、H-UAロケットを用いる「戦略的な中型計画」、イプシロンロケットを駆使する「公募型小型計画」、多様な打上げ機会を利用する「小規模プロジェクト群」という、三本柱を骨子とする形で提示されたが、各研究分野の将来計画をその枠組みの中に具体的肉付けしていく作業は、引き続き宿題となっていた。そこで3月31日に関連する各研究分野に向けて分野ごとの将来計画の検討をお願いし、分野を超えて検討状況を共有する目的で、今回のシンポジウムが開催されたものである。

 当日は、まず議論の前提となる「イプシロンロケットの将来計画」および「小型衛星による探査の将来計画」が、宇宙研関係者より報告された。次いで理学分野では、X線・ガンマ線天文学、光・赤外線天文学、宇宙電波、惑星間プラズマ、惑星探査、太陽、宇宙での基礎物理学、宇宙生物学の8分野の代表から、検討状況が報告された。工学分野では、全体をロケットや惑星間航行を中心とした「宇宙輸送・航行工学」と宇宙機に重点を置く「宇宙機システム工学」の2つにくくって報告が行われ、さらに宇宙環境利用科学分野からの報告があった。最後に1時間弱の総合討論を行い、閉会となった。参加者は170名を超え、会場となった理学部4号館の講義室はほぼ満員の状況であった。

 今回は当初から具体的なミッションの選定を目的としてはいなかったので、明確な結論に達したわけではないが、理工をまたいで異なる分野間の議論を共有できたことは、極めて意義が大きかった。今後、さらに検討を継続してロードマップに肉付けを行い、その結果を、日本学術会議を含む研究コミュニティ、JAXA、文部科学省、宇宙政策委員会などに提示していくことになろう。

(宇宙理学委員長 牧島一夫/宇宙工学委員長 山川 宏)