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ISASニュース

第6回宇宙科学奨励賞、米徳大輔氏に授与

No.397(2014年4月)掲載

公益財団法人宇宙科学振興会の「宇宙科学奨励賞」は、2013年度に第6回を迎えた。表彰式は、3月11日に霞が関ビル内東海大学校友会館で開催された。第6回宇宙科学奨励賞は、宇宙理学関係では金沢大学理工学域准教授の米徳大輔氏に、研究課題「飛翔体搭載ガンマ線偏光検出器の開発とガンマ線バーストの放射機構の研究」により授与することになった。残念なことに今年度は、工学関係では推薦件数も少なく、奨励賞を授与する該当者はなしとなった。

米徳氏の受賞理由は、(1)超小型ガンマ線バースト偏光検出器(GAP)を開発し小型ソーラー電力セイル実証機IKAROSに搭載し、その運用に伴ってガンマ線バーストのデータ取得とその解析に当たった、(2)IKAROSが宇宙航行中にGAPが観測したガンマ線バーストのうち明るい3例から世界に先駆け有意(有意度3.5σ)なガンマ線偏光を検出した、(3)そのGAPにより観測された偏光データを用いて量子重力理論におけるCPT対称性(C:電荷、P:空間、T:時間)の破れを検証し現代の基礎物理学に対して重要な仮説を提唱した、の3点であることが選考委員会から報告された。小型の技術試験衛星にピギーバック検出器として搭載された小型軽量観測装置で、このような重要な成果を挙げられたのは、大変喜ばしいことである。今後新たな観測により、偏光放射の有意度を上げ、その放射メカニズムなどをいっそう明確にしてもらいたいと思う。

実は昨年度の工学関係の奨励賞は、「ソーラーセイルによる深宇宙探査・航行技術の実証的研究」の研究課題によりインハウスで製作され運用されたIKAROSの開発の中心となった津田雄一氏に授与された。今年度、そのIKAROSに搭載した10kg級の超小型検出器による科学的成果で米徳氏に理学関係の奨励賞が授与されたことは、宇宙研OBとしても財団関係者としても、誠に感慨深いものがある。日本の宇宙科学の成果は、当然ながら優れた宇宙工学技術の発展に依存している。宇宙技術開発の分野で良い成果を挙げている若手精鋭研究者が今後多数、本賞受賞候補者として推薦されることを期待している。

(公益財団法人 宇宙科学振興会 常務理事兼事務局長/長瀬文昭)

受賞者を囲んで記念写真(写真左より松尾弘毅 代表理事、米徳大輔 受賞者、森尾稔 評議員会長の各氏)