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ISASニュース

再使用観測ロケットのエンジン技術実証試験

No.397(2014年4月)掲載

宇宙研では、将来のSSTO(単段式宇宙輸送機)による高頻度大量宇宙輸送を実現する礎として、S-310などの観測ロケット(使い捨て型)を再使用型に置き換えることを計画しており、現在、再使用観測ロケット開発の技術的な課題について実証試験を行っています。

再使用観測ロケットは、仮にエンジン1基が故障して停止した場合でも機体を失うことなく射点に帰還できるよう、エンジンを4基搭載します。このエンジンは、液体水素と液体酸素を推進剤とし、100回のフライトに耐え得るよう高信頼・長寿命の設計を行っています。また、垂直離着陸で飛行することから、広範囲な推力制御機能(40〜100%)、着陸前のエンジン再着火機能、1エンジンが故障した場合に残りのエンジンを迅速にスロットルアップする応答性を有しています。さらには、過酷な条件で使用されるターボポンプの軸受け・軸シールに点検ポートを設けて射点でも簡単に劣化や摩耗の状態を観察できる構造とするなど、従来のエンジンにはない新しい機能を持たせています。

昨年より、このエンジンの技術実証試験を角田宇宙センターで行っています。昨年5〜6月に行った液体酸素ターボポンプ単体試験に続き、12月から今年2月にかけて液体水素ターボポンプ単体試験を実施しました。供試体である液体水素ターボポンプの性能、機能、健全性を確認するため、試験装置に関連する項目も含め100点以上の計測を行っています。試験中は10名ほどの実験班メンバーが、各自担当する監視項目をモニターして刻一刻と変化するデータをにらみながら、供試体に異常の兆候が見られないか神経を集中させます。全8回の試験を無事に終了し、実機開発に向けて必要なデータが取得できました。

現在、液酸/液水ターボポンプと新たに製作した燃焼器を組み合わせたエンジンシステム燃焼試験に向けた準備を行っています。今後は、これらエンジン技術実証試験で得られた成果をもとに、再使用観測ロケットの早期フライトを実現すべく、実機開発に向けたエンジン/システム設計を進めていきます。

(八木下 剛)

液体水素ターボポンプ単体試験が終了

次はエンジンシステム燃焼試験を実施予定