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ISASニュース

あきる野実験施設の近況

No.394(2014年1月)掲載

ハイブリッドロケット研究ワーキンググループ(代表者:宇宙飛翔工学研究系嶋田徹)では、超小型衛星の低コスト打上げのためのハイブリッドロケットの開発を目指しています。現在、これまでの基礎研究、要素研究の成果をもとに、ハイブリッドロケットエンジンの技術実証を目的とした目標推力5kNの燃焼試験(HTE-5-1)を、あきる野実験施設で段階的に実施しています。あきる野実験施設は比較的小規模用の実験施設であるため、大推力(50kN)、長秒時(数分間)の燃焼試験には能代実験場などの大規模実験施設を使う必要があります。そこで、あきる野実験施設を用いての技術実証試験の最終目標は、酸化剤に液体酸素を用いて平均推力5kN、燃焼時間30秒を設定しています。

その第一段階として、酸化剤に気体酸素を用いて平均推力5kN、燃焼時間10秒以上を目標とした燃焼試験を実施していま す。2012年度、あきる野実験施設に気体酸素を酸化剤として供給できるHTE-5-1試験設備を構築しました。ただし、供給系 は推力1.5kNを数十秒実施できるレベルのものとなっています。供試体(エンジン)は、首都大学東京の湯浅三郎客員教授、櫻井毅司准教授によって提案された酸化剤流旋回型ハイブリッドロケットエンジンです。酸化剤流旋回方式は、酸化剤流の燃料表面流速増加と燃料/酸化剤の混合促進の効果により、ハイブリッド推進の最大の欠点である燃える速さや燃えにくさを改善する方式です。

2013年7月と、10月から11月にかけて、首都大学東京の教授、学生らとJAXA職員らによって、酸化剤に気体酸素、燃料にポリプロピレンを用いた着火試験、燃焼試験が実施されました。7月には、推力0.5kN、2秒の着火試験を行い、新規製作の試験設備/供試体で初めての着火に成功しました。次いで、推力1.5kNで5秒の燃焼試験に成功しました。10〜11月には、より長時間での機能を確認するために推力1.5kNで10秒と20秒間の燃焼試験を実施し、いずれも成功しました。これにより、新規製作の試験設備/供試体を用いて、あきる野実験施設でハイブリッドロケットエンジンの長時間燃焼試験が可能であることが確認できました。

今後、供給系を推力5kNで10秒以上実施できるレベルのものに改良し、2013年度中に、気体酸素を用いて推力5kN、燃焼時間10秒を達成する予定です。

(北川幸樹)

燃焼試験の様子(推力1.5kN、燃焼時間20秒)