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ISASニュース

「あかり」が“何もない空”からの赤外線の成分分離に成功

No.394(2014年1月)掲載

赤外線天文衛星「あかり」が観測した、星や銀河などの天体が“ない”空からの近赤外線面輝度スペクトルを、(1)太陽系からの赤外線(黄道光)、(2)銀河系からの赤外線、(3)遠方宇宙からの赤外線(背景放射)の3成分に分離することに、宇宙研・台湾中央科学院・韓国天文宇宙科学研究所・東京大学の研究グループが世界で初めて成功しました。分離された赤外線放射成分をそれぞれ詳しく解析することで、新たな科学成果が得られました。本研究で得られた広い天域にわたる近赤外線面輝度スペクトルのデータは、世界の研究者たちに公開されています(*1)。このような広い天域にわたる近赤外線面輝度スペクトルデータは過去に例がなく、今回作成したものが世界初です。本研究の成果は、2013年12月25日発行の『日本天文学会欧文研究報告誌』(PASJ)に、3編の論文として発表されました。

我々のグループでは、初期宇宙での星形成史を明らかにすることを目的に、赤外線背景放射の観測的研究を進めてきており (『ISASニュース』2012年5月号ISAS事情など参照)、本研究成果もその一環です。背景放射の抽出のためには、その何倍も明るい手前の光(前景光)を精度よく差し引く必要があります。本研究では、“邪魔者”である前景光を精度よく決定することで、“お宝”である背景光のスペクトルの抽出に成功しました。もちろん、我々にとっての“邪魔者”である前景光も、太陽系や銀河系の研究者にとっては“お宝”となります。このように、「あかり」による面輝度スペクトルには太陽系から銀河系、遠方宇宙に至るさまざまな情報が含まれており、それらを同じデータセットから同時に研究できることが、面輝度観測を用いた天文研究の面白さでもあります。

本研究の成果は赤外線グループのWebリリースにて詳しく解説されていますので、詳細はそちらをご覧ください(*2)。

(津村耕司)

*1 新しいウィンドウが開きます http://www.ir.isas.jaxa.jp/AKARI/Observation/
*2 新しいウィンドウが開きます http://www.ir.isas.jaxa.jp/AKARI/Outreach/results/results.html

「あかり」全天画像(9マイクロメートル)と、いくつかの点での“何もない空”のスペクトル。