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ISASニュース

「ひので」とIRISとの共同観測を開始

No.392(2013年11月)掲載

6月27日、NASAの新衛星IRISが打ち上げられました。太陽観測衛星「ひので」が捉えた活動的な彩層の動画は世界に多大なインパクトを与え、その結果開発されたのがIRISです。「ひので」によって陽の目を見た彩層の重要性。「コロナ加熱問題」の解明のためにも、彩層中でのエネルギーの振る舞いはとても大事です。しかし、「ひので」のみでは彩層物理量の精密な測定ができません。IRISによる分光観測が加わることで、「ひので」の研究は新たなステージに入ります。

そのためには、両衛星で有意義な共同観測を実施する必要があります。そこで、IRIS打上げの翌週より2ヶ月間、IRISの本拠地であるロッキードマーティン太陽天体物理学研究所(米国カリフォルニア)に単身乗り込み、衛星の初期運用に参加しました。7月17日以降、私は衛星指向安定精度の解析を集中的に行い、IRISチームメンバーと協力して周回変動の特性などを調べ、機上ソフトウェアの改修が行われました。その結果、周回変動による視野のずれを1秒角以下に、指向精度を3秒角以下に抑えることができ、1ヶ月で「ひので」との共同観測開始に必要な条件を整えることができました。

こうして8月末からIRISの本観測が、そして同時に「ひので」との共同観測も開始されました。ここで最も苦心したのは、位置合わせです。観測視野の狭い両衛星が同じ領域を見なければ意味がありません。そこで、朝から午後にかけてIRISの観測計画を一緒に立案し、その夜に「ひので」の朝会に電話参加して観測位置を厳密に伝え、運用終了後に次の観測計画のドラフト作成をするという方策で、何とか対応しました。その後、IRIS運用者と「ひので」との共同観測における注意事項の確認およびルール制定などを行って、IRISと「ひので」の共同観測は順調な滑り出しを見せています。彩層のスペクトル解析はかなり難しいですが、今後の成果にご期待ください。

(岡本丈典)

シンポジウム2日目講演終了後の集合写真