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ISASニュース

第1回「宇宙物質科学シンポジウム」報告

No.392(2013年11月)掲載

10月16日から18日にかけて、国際シンポジウム「第1回宇宙物質科学シンポジウム」が相模原キャンパスで開催されました。小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰ったサンプルの国際公募研究が開始されて最初の成果発表の場でもあり、海外所属機関研究者約30名を含む90名近くの 研究者が一堂に会し、朝から夕方まで丸3日、ほぼ満員状態の2階大会場で非常に活発な議論が行われました。

初日は台風26号が関東に最接近した日であり、またアメリカ政府機関閉鎖の影響でNASA職員の参加がキャンセルされるなど、心配事が重なりましたが、11ヶ国の研究者により計60件以上の講演が行われました。

本シンポジウムの狙いは、「はやぶさ」サンプル分析結果の共有をきっかけとして、将来のサンプルリターンミッションに関する発表、新しい分析技術に関する発表、サンプル分析に隣接する分野と連携しての統合サイエンスの可能性をテーマとし、サンプルを持ち帰って詳細分析をすることはより広い範囲の惑星科学にどれだけのインパクトを与えるかを関係者がそろって考え、感じる場とすることでした。

「はやぶさ」サンプルの国際公募研究の成果については、まだ半分程度が分析進行中ということで、非破壊分析などの成果や、これから得られる成果の意義について語る講演もありましたが、「はやぶさ」が持ち帰ったサンプルの多様性についての講演や、イトカワ表層で微粒子に刻まれた情報から小惑星の活動史やイトカワ形成前の情報に迫る研究成果も発表され、各自が論文投稿前の情報を惜しみなく披露していました。

今回のシンポジウムの特徴は、こういった太陽系物質科学研究者だけでなく、地上観測や、実験、理論分野の研究者も多く参加したことです。そのため、参加者の感想として、「イトカワから持ち帰ったサンプルの分析結果を初めて直接聞くことができた。おかげで、これまで信じることができなかったことが信じられるようになった。新しい研究の動機付けにもなった」というのが印象的で、シンポジウム開催の狙いが一つかなったと感じた瞬間でもありました。もう一つ、「はやぶさ」帰還直後は「おかえり、はやぶさ」だった研究者のあいさつが、このシンポジウムでは「ありがとう、はやぶさ」に変わっていた、ということも付け加えて、報告の終わりとしたいと思います。

(安部正真)

シンポジウム2日目講演終了後の集合写真