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ISASニュース

幻のL-4S-6号機

No.390(2013年9月)掲載

ここのところ内之浦宇宙空間観測所の開所50周年などの周年事業が続いている関係で、黎明期から初期にかけての日本の固体ロケットの調査を進めています。目先の業務も山積していますが、世代交代により失われつつある実物資料や証言を後世に遺すためにも、あまり後回しにもできません。ペンシルロケットについては昨年度の相模原市立博物館での企画展をきっかけに十数機の実機の存在を確認し、種類の同定を進めたところですが、これに加えてベビーやカッパ、ラムダなどについての調査も進めています。最近特に進んだのは、幻のL-4Sロケット6号機の調査です。

L-4Sは、1970年2月に日本初の人工衛星「おおすみ」の打上げに成功した4段式の固体ロケットで、3段式のL-3Hに第4段を追加することで地球周回軌道への投入を目指したものです。軍事転用の懸念を払拭するために世界唯一の「無誘導方式」をとったほか、世界最小の人工衛星打上げロケットでもあります。1966年9月の1号機以来、途中漁業問題による1年半ほどの中断もあり、4号機まではどれも軌道投入に至らず、さまざまな改良を加えられて5号機でようやく軌道投入にこぎ着けました。

6号機の準備も進められていたようですが、5号機の打上げ成功に伴ってキャンセルされ、フライト品が残りました。それらは開発を担当した各研究室などで個別に管理されてきましたが、その所在が明らかになりつつあります。特に印象的だったのが、構造機能試験棟の一角で発見された第4段モータケース(燃焼試験済み)や、OBにより管理されていたノズル(同)、別の研究室で発見された精密加速度計など、幻の「おおすみ2号」の構成要素が発見されたことです。これらの資料の大部分については相模原キャンパス展示室で常時公開を行っています。予備的な調査結果については日本天文学会2013年秋季年会で報告を行いましたが、今後さらに聞き取り調査などを進め、より充実とした資料としたいと思っています。

(阪本成一)

L-4S-6号機用の第4段モータケースとノズル。ノズルの側面には小さく「L4S6」の刻印がある。