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ISASニュース

第12回「君が作る宇宙ミッション」(きみっしょん)開催

No.390(2013年9月)掲載

夏休みの恒例行事となった「君が作る宇宙ミッション」( 通称:きみっしょん)が、今年も8月5〜9日の5日間、相模原キャンパスを舞台に行われました。きみっしょんは、「自ら考え、自ら決断し、自ら作業する」という研究者の姿を、宇宙ミッション立案を通して高校生が身をもって学ぶ教育イベントです。今年も書類審査で選ばれた24名の高校生が全国から集いました。

きみっしょんでは、24名の参加者が4つの班に分かれて、それぞれミッション検討を行います。学校も学年も異なる初対面の高校生たちを、議論がうまくかみ合う状態にするまでが、第一の関門です。そのため、スタッフはクイズや簡単なチーム競技を各種用意して、チームワークを固めます。最初はがちがちに緊張していた高校生たちも、その日が終わるころにはかなり打ち解けてきました。さっそくどのようなミッションにするのか、議論です。今年は、大学院生スタッフが、ブレインストーミングの手法を本格的に学んで、高校生の議論を誘導していきました。

2日目は、曽根理嗣准教授の特別講義で始まりました。先生の専門の化学電池のお話だけでなく、ご自分の学生時代の経験を熱く語っていただき、高校生は深く感じるものがあったようです。

2、3日目は所内見学など短時間のイベントを挟んで、朝から夜までみっちりミッション検討です。夕方に進捗報告会があるのですが、正直、3日目の時点では、ようやくテーマが決まったばかりでこれから何をしたらよいの???という状態の班もあり、少々心配していました。しかし、そこからのスパートがすごかった。24時間足らずの間に、各班どんどん検討を進め、かなり高度なところまでしっかりと具体的な結果を出していました。

4日目夕方に、最終発表会を行いました。宇宙研の先生方や、JAXAで実際のミッションを進めている職員などの前で、3日間の検討の成果を発表します。SELENE班は、現在追尾できていない1〜10cmの小さなデブリを軌道上で発見、回収する衛星を提案しました。コストの検討が課題でしたね。MUSES班は、軌道上でシャボン玉を膨らませて巨大アンテナを製作するという提案。欲しいという声が会場から上がりました。PLANET班は、一度に複数のローバーを着陸させて多地点、多種のサンプルを取得しようとする計画。ローバーへの強いこだわりを感じました。ASTRO班は、宇宙で出来たての料理を提供する調理システムのデザイン。無重量状態で炒め物をつくる調理器「ラリーシステム」は秀逸でした。発表会では、高校生たちは前日とさえ見違えるような自信たっぷりの発表ぶり。さらに、質疑応答では他班の高校生から競うように手が挙がっていました。この模様は、ネットで生中継され、100人を超える人が見ていたようです。

高校生たちの多くは、今後も立案したミッションの検討をさらに続け、来年春の日本天文学会ジュニアセッションでの発表を目指しています。

高校生たちの成長は、大学院生スタッフの頑張りがあってこそのものです。彼らにとっては、きみっしょんの運営自体が一つの大きなミッションなのです。本業の研究の傍ら、昨年秋からミーティングを繰り返して指導の方針・方法を議論し、直前には自分たちでミッション立案のリハーサルまでして準備してきました。本番期間中は、高校生が帰った後も深夜まで反省会が開かれ、多くのスタッフが徹夜に近い状態で翌日の指導の準備をしていました。事務局を中心に、学年や立場を超えて、それぞれが良いと思ったことを積極的に提案・実行していく、素晴らしいプロジェクトチームでした。この経験が、大学院生の皆さんの将来にも大いに役立つことを信じています。

最後になりましたが、きみっしょんの実施に当たってご支援いただいた宇宙科学振興会、ミッション検討にアドバイスをいただいた先生方、またさまざまな形でご協力いただいた職員の皆さま、生協・食堂・守衛の皆さまに厚くお礼申し上げます。

(山村一誠)

高校生と大学院生スタッフでの記念撮影

ミッション検討も大詰めを迎え、高校生たちの議論も白熱。