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ISASニュース

相模原キャンパス特別公開2013

No.389(2013年8月)掲載

夏といえば特別公開。7月26日(金)・27日(土)の2日間の開催で合計1万3894名と、前年度の特別公開とほぼ同数の来場者がありました。近隣にお住まいの方や宇宙ファンの方からの「毎年楽しみに来ているよ」という声は、うれしい限り。大人と子ども数名のグループで見学される方も多く、夏休みのお出掛け先としても選んでいただけているようです。私は正門受付で来場者をお迎えするのが当日の主な仕事でした。遠方からお越しの熱心な方もお見掛けしました。蒸し暑い中、ありがたいことです。

今年の特徴的な展示を一つ挙げるとすれば、小惑星イトカワから持ち帰った微粒子の特別展示です。これは相模原キャンパスに隣接する相模原市立博物館で7月13日から9月1日まで開催の企画展「片道から往復へ〜新たな宇宙時代の到来〜」の特別展示として、JAXAが保管する微粒子のひと粒を光学顕微鏡で直接のぞけるよう展示したもので、7月17日から28日までの期間限定での公開でした。顕微鏡をのぞいてみると、粒径55μmの微細な粒子に光が当たり、やや黄色味を感じるカンラン石の特徴を確認することができました。小惑星から持ち帰った実物の持つ説得力があり、あらためて「はやぶさ」ミッションの現実感が湧いた方も多かったようです。博物館の集計によると、12日間の公開期間中に7146名もの方がご覧になったということです。微粒子の実物を光学顕微鏡で直接のぞける形での公開は世界初。当日整理券を求める人の列ができましたが、帰還カプセルを展示した2010年のような大混雑はなく、整理券による誘導が整然と行われていました。「はやぶさ」への熱狂は、現在はだいぶ落ち着いてきていると感じます。

特別公開の内容は盛りだくさんで、「2日かけても見切れない」との声も聞かれました。2日間にわたる公開は2009年に始まり、今年で5年目になります。2日間開催を始めた当初も「1日では回り切れない」との意見に応えてのことだったのですが、ますます充実する傾向にあることは明らかです。宇宙科学セミナーや宇宙学校スペシャルは相変わらず高い人気で、講師の研究者も熱心な聴衆に大いに触発されたようです。さらにほとんどの方は何か新しいものや珍しいものを見聞きしようと、会場内を広く渡り歩いていたようです。子どもたちに大人気のスタンプラリーも、普段立ち入ることのない研究所の中を歩き回って印象づける仕組みです。生協や銀河連邦物産展にも人が集まり、食事や休憩を取りつつ時間の許す限り見て回っているようでした。「はやぶさ」は今なお多くの人を引き付けますが、興味の対象は「はやぶさ」から「はやぶさ2」へ、さらに特別公開をきっかけに、さまざまなプロジェクトや将来計画を知って関心の対象が広がることを期待できる充実ぶりでした。

来場者数はというと、2010年を例外とすれば近年は1万3000名以上で微増してはいるものの、それほど大きくは増えておらず頭打ちのような推移です。さらにたくさんの方に見に来ていただくには、どうすればよいのでしょうか。話題性のあるテーマをどのように打ち出していくのか、ここで働いたり学んだりしている人の姿をどのように見ていただくのかなど、相模原キャンパスの普段の展示の在り方とともに考えていくときが来ているように思われます。通常時の展示室の見学者数は年間7万名を超え、さらに増え続けています。相模原キャンパスには展示館(仮称)の建設が予定されていますが、年1回の特別公開と相乗効果がある形で発展させていきたいものです。

(大川拓也)

光学顕微鏡で小惑星イトカワから持ち帰った微粒子を観察。相模原市立博物館にて。

「はやぶさ2」に載せるメッセージは募集締め切りを延長したことで、特別公開当日も応募が集まった。