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ISASニュース

惑星分光観測衛星 機体公開

No.388(2013年7月)掲載

惑星分光観測衛星(SPRINT-A)は、相模原キャンパスでの一連の開発試験を終えたことを受けて、6月8日に報道関係者への機体公開を実施しました。当日は土曜日にもかかわらず、26社46名と多くの報道関係者にお越しいただき、にぎやかな公開となりました。この後、惑星分光観測衛星は内之浦での整備を受けて、いよいよイプシロンロケット試験機で宇宙を目指すことになります。2009年1月にプロジェクトとして発足してから、紆余曲折がありましたが、どうにかここまでたどり着くことができました。

この惑星分光観測衛星には、大きく三つの側面があります。一つ目は、惑星分光観測を実施する、という科学目的そのものです。極端紫外線で本格的に惑星環境を観測するというあまり前例がないことだけに関係者の期待も大きく、プロジェクトの若手研究者は大御所の某先生から「一流の観測成果が出なかったら殺す」と物騒なことまで言われています。某先生の人柄を知らなければ、パワハラ相談センター(?)の連絡先を検索するところです。

二つ目は、NESSIEという実験装置を搭載していることです。NESSIEは将来の衛星用電源系技術を実証するものですが、我々としては、電源に限らず、将来の衛星に役立つ新技術を研究開発する場を提供することは重要と考えています。衛星開発では高い信頼性を確保するため、どうしてもフライト実績がある技術を使いがちです。ただし、そうすると、いつまでも新技術が生まれなくなってしまいます。惑星分光観測衛星におけるNESSIEのように、ほかの主ミッションを持つ衛星にアドオンでオプション実験機器を搭載して新技術のフライト実証の場を設ける例が増えれば、そのようなジレンマが少しは解消できるのではなかろうかと期待しています。

三つ目は、バスそのものの新しいつくり方を試している、という点です。今までの衛星も過去の設計を流用することはあったのですが、それを「モジュール化」という考え方で明示的にガイドライン化しました。これにより、将来的にいろいろなミッションを持った惑星分光観測衛星の兄弟衛星が開発されることを期待しています。

惑星分光観測衛星は、これからいよいよ大きな正念場を迎えますが、今まで同様、プロジェクトメンバーの結束・モチベーションの高さで乗り切れるものと信じています。

(澤井秀次郎)