宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASニュース > 連載の内容 > ISAS事情

ISASニュース

BepiColombo MMOの総合試験

No.387(2013年6月)掲載

ESA(欧州宇宙機関)との共同で水星探査を行うBepiColombo計画において、JAXA 側が製作する水星磁気圏探査機(MMO:MercuryMagnetospheric Orbiter)の、日本における最後の試験であるフライトモデル総合試験が、昨年10月から相模原の環境試験棟クリーンルームで行われています。衛星の上部デッキと下部デッキをばらした状態で順次機器を取り付けて電気試験を行い、全部の機器の取り付けを終えました。4月の半ばに上部デッキと下部デッキを結合し、結合後の各機器の動作確認をしたところです。

写真の状態から高利得アンテナおよび駆動機構を衛星上面に取り付け、側面や衛星上部を多層断熱材(MLI)で覆い、太陽電池が貼り付けてある側面パネル8枚を取り付けると、ほぼ打上げ時の形状となります。側面パネルは1mほどの長さがあるので、組み上がった状態ではそれなりに高さがあります。しかし、写真を見て分かるように、MMOは熱設計などいくつかの理由から従来の衛星に比べてとても平べったい形状になっており、上下部デッキ間の約30cmの空間にほぼすべての機器が搭載されています。形状が似ている火星探査機「のぞみ」では約61cm、磁気圏尾部観測衛星GEOTAILでは1m強、磁気圏観測衛星「あけぼの」では1m弱の空間に機器を取り付けています。それらと比べると、MMOがいかに狭いところに機器を押し込んでいるかが分かると思います。

これから夏場にかけて、スピン試験、電磁適合性(EMC)試験、運用模擬試験、振動・衝撃試験を行います。そして観測機器の健全性を確認するためのセンサ単体での真空試験を経た後、2013年度末に熱バランス試験を行い、来年6月末ごろにMMO単体での総合試験を終了します。これをもってMMO単体では完成となります。

その後、MMOをオランダのESA/ESTEC(欧州宇宙研究技術センター)に輸送。そして、ESA 側が製作・試験をしている水星表面探査機(MPO:Mercury PlanetaryOrbiter)、巡行軌道中の電気推進モジュール(MTM:Mercury Transfer Module)、MMO用のサンシールドと組み合わせた母船総合試験を、来年末ごろより実施します。全体確認を行った後、射場である仏領ギアナのクールーへ輸送。射場試験を経てアリアン5ロケットによって打ち上げられることになっています。

(早川 基)

上部デッキと下部デッキを結合したBepiColombo MMO