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ISASニュース

第5回小型予冷ターボジェット総合燃焼実験

No.385(2013年4月)掲載

能代ロケット実験場には、「極低温推進剤試験棟」という実験設備があります。この設備は、H-Iロケット開発をバックアップするための液体水素(液水)/液体酸素(液酸)ロケットエンジン試験設備として、1978年12月に完成しました。約30年間、液水/液酸エンジン専用の実験設備として利用された後、老朽化が進んだことから、2008年5月に汎用性を備えた試験設備として再整備されました。その後、LNGエンジン用ガス発生器燃焼試験、液体水素を冷媒とする超伝導機器の実験、液体水素タンク内液面可視化や管内二相流可視化など、極低温推進剤を用いた基礎実験の場として幅広く活用されています。

この能代ロケット実験場で2月19日から3月6日にかけて、JAXA研究開発本部ジェットエンジン技術研究センターによって、第5回小型予冷ターボジェット総合燃焼実験(PCTJ-5)が実施されました。このエンジンは、液体水素を燃料とする極超音速機用のターボジェットエンジンで、極超音速飛行時に流入する高温空気(マッハ4では600℃以上、マッハ5では900℃以上)を冷却する熱交換システムを装備することにより、最大マッハ5まで作動可能な設計となっています。2010年までに推力100 kg級の技術実証エンジンを開発し、地上燃焼実験(PCTJ-1〜4)、およびマッハ2飛行実験(BOV-3)が実施されました。

今回の実験では、極低温推進剤試験棟の高圧ガス設備と高温空気供給設備を使用し、世界最高速となるマッハ4条件でターボジェットエンジンが正常に作動することが実証されました。実験期間中の3月4日には、立川敬二JAXA理事長が実験場に初めて来場し、燃焼実験の様子や実験場設備を視察されました。

今回は2月という極めて寒い時期の実験となり、近年まれに見る大雪で実験継続が危ぶまれる日もありましたが、地元の皆さまをはじめとする多くの方々の多大なご支援のおかげで、実験目的を完全に達成することができました。この場を借りてお礼申し上げます。

(小林弘明)

立川敬二JAXA理事長視察時の保安集合写真