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ISASニュース

高頻度再使用ロケット実験機、第3次地上燃焼試験(FRV-3)

No.385(2013年4月)掲載

将来、高頻度に宇宙へアクセスし、大量に物や人を運ぶためのロケットに必要な技術・運用方法の研究として、3月4日から20日まで能代ロケット実験場にて高頻度再使用ロケット実験機の地上燃焼試験を行いました。

3シリーズ目となる今回の実験では、エンジンの異常を判断して安全に燃焼を停止する役割を担うヘルスマネジメントコンピュータ(HMC)を機体に載せ、バルブやセンサの故障を模擬した燃焼試験を行って、HMCによる異常の判断を試みました。また、水素を使うロケットを安全かつ効率的に運用するため、液体水素などの推進剤の充填やバルブの動作チェックを搭載計算機で自動的に行うなど、時間短縮や人員削減を目指したオペレーションを実践しました。

計3回の燃焼試験を行い、エンジンの故障を適切に判断するために必要なデータが取得され、HMCで異常判断するための課題も明らかになりました。また運用を自動化して行うためにバルブや調圧弁を増やした結果、地上システムが複雑となり、さらなる効率化のためには操作の工夫や人員の配置に改善が必要であることが分かりました。

ここ数年、3月に能代で実験することが多いのですが、今年は気温が低いためか雪が多く残っており、寒いスタンド点で実験班の皆さんは頑張っていました。特に、今回この実験に初めて参加した柴野靖子さんが、エンジン班の一員として現場で活躍してくれました。指令電話の向こう側から「さむい……」というか細い声が聞こえてきて、暖かい本部でちょっとだけ心配していましたが、大先輩のオジサンたちの指導のもと、燃焼器を点検したり、ターボポンプの温度を管理したり、試験中には軸受の温度をドキドキしながら見張ったりと、男女の差などもちろんなく実験のループ中で任された仕事をしっかりとこなしていました。厳しい現場で毎日大変だったと思いますが、反省会で「楽しかったです。次回もまた能代に来たいです!」との彼女の明るい言葉に、私も含め大先輩のオジサンたちも、また一緒に仕事がしたい、と思ったに違いありません。

(野中 聡)

FRV-3地上燃焼試験とエンジン整備をする柴野靖子さん