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ISASニュース

全天X線監視装置(MAXI)が極超新星の痕跡を発見

No.384(2013年3月)掲載

国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに搭載した全天X線監視装置(MAXI:Monitor of All-sky X-ray Image)は、はくちょう座方向に超新星爆発の痕跡を見つけました。その爆発は、普通の超新星爆発より100倍も大きなもので、その規模から“極”超新星爆発(ハイパーノバ)であると思われます。極超新星爆発の痕跡は我々の住む天の川銀河ではこれまで見つかっておらず、今回が世界初となります。

MAXIに搭載されている、X線CCDスリットカメラ(SSC)は、MAXIの観測開始(2009年8月)以来、全天にわたって広がった高温度領域を観測してきました。その全天マップ(図1)から、はくちょう座の方向にX線の大構造(図2)を確認し、これを解析した結果、およそ300万〜200万年前に爆発した極超新星の痕跡の可能性が高いとの結論に達しました。

銀河には超新星爆発のつくった高温ガスがたくさんあり、X線でバブルのように見えています。ところが、ほかの銀河では、超新星爆発でつくるバブルよりもさらに大きなバブルがいくつか見つかっており、スーパーバブルと呼ばれています。我々の銀河内にもX線で大きな構造はありますが、見かけの大きさが大き過ぎて、これまでの視野の狭い望遠鏡ではうまく観測できませんでした。これに対して、MAXIのSSCは、大きく見える構造を観測しやすくしたものです。今回、SSCにより見かけの半径が11度もあるはくちょう座の大構造を調べ、鉄、ネオン、マグネシウムからの輝線を検出し、その温度が300万度にもなることや、その全エネルギー、大きさなどを測定しました。これらのことから、はくちょう座の大構造は、300万〜200万年前に普通の超新星爆発の100倍ものエネルギーによってつくられたことが分かりました。これは、太陽質量の数十倍の星が極超新星爆発を起こした結果だと解釈できます。

極超新星は、宇宙で最大の爆発であるガンマ線バーストを起こし、超高エネルギー宇宙線の起源天体に関連しており、強い重力波も出すと思われている現象です。極超新星爆発は超新星爆発に比べればめったに起こるものではありませんが、その巨大な爆発エネルギーは、銀河全体の進化に大きな影響を与えます。今回の観測は、そのような珍しい現場を銀河系内で確認できたことになります。

(木村 公)

図1
MAXI のX線CCDスリットカメラ(SSC)で30ヶ月間観測して得た0.7〜7 keVのエネルギーバンドの全天画像

図2 はくちょう座付近の拡大図