宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASニュース > 連載の内容 > ISAS事情

ISASニュース

ISSでの表面張力対流実験

No.383(2013年2月)掲載

国際宇宙ステーション(ISS)での実験が始まってから今年の8月で5年になります。若田光一宇宙飛行士の長期滞在に向けた準備作業が行われる一方、「きぼう」船内実験室では、物質科学テーマの実験が行われています。

日本実験棟「きぼう」の栄えある最初の実験テーマとして開始された液柱マランゴニ対流実験の第1テーマ(Marangoni Experiment In Space:通称MEIS)も、2月の実験をもって終了します。この実験では、2枚の円板(ディスク)の間に液体の柱をつくり、ディスクに温度差を与えます。すると液柱側面を引っ張る力に差が生じ、これが駆動力となって液柱内に流れが発生します。微小重力下では自然対流が抑制されるので、この表面張力対流を研究するのにISSは絶好の場所です。これまで足かけ4年の実験により、層流から振動流への遷移条件や内部の流れの構造などを体系的に観測してきました。

2月のシリーズではP A S (Particle Accumulation Structure:粒子集合構造)に注目した実験も行っています。内部の流れを観察するため、実験では透明な液体中に粒子(金コート樹脂球)を分散させています。この粒子は特定の流れの条件になると自発的に集合してパターンを形成することが、地上での小さな液柱の実験で分かりました。ISSでの大きな液柱ではどうなるのか。実は、最初の年からPASの観察を目指した実験を行いましたが、地上実験から予測した条件ではPASが観察できませんでした。諦めかけていたところ、2011年秋にようやく写真のような楕円の構造が観察できました。本シリーズでは、PASの発生条件を詳しく調べる実験を実施中です。面白い結果がまとまりましたら、本誌面を通じて報告させていただきます。

(石川毅彦)

透明な加熱ディスク側から観察した様子。トレーサー粒子が楕円状に整列している。