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ISASニュース

月惑星探査ローバによる火山地域無人観測のためのフィールド試験

No.383(2013年2月)掲載

2012年10月28日〜11月6日、伊豆大島三原山裏砂漠において、月惑星探査ローバを用いて火山地域無人観測のためのフィールド試験を実施した。この試験は、伊豆大島無人観測ロボットシンポジウムの活動の一環として毎年同時期に行っており、今年で3回目の参加となる。試験フィールドとしての裏砂漠は、回避すべき岩石の乱立している地形、スコリアで敷き詰められた見通しが数km取れる平野など、バラエティに富み、さながら火星地表面の様相を呈している。また、GPSの電子基準点が近傍(10km以内)に4つあり、いずれの季節、時間帯でも移動の評価が高精度にできるため、特にローバの自律航法誘導の試験に適している。宿泊設備に近い、フィールド中心部への車でのアクセスが可能、都心から近いなど、試験場として優れた特徴も有している。

宇宙研の職員ならびに月惑星表面探査技術(STEPS)ワーキンググループの自律探査技術分科会に所属する各大学メンバーが本試験に参加し、宇宙研が所有するローバをテストベッドとして種々の試験を行った。今年度は、新型環境認識センサの評価、画像による地形認識と自律航法誘導のためのデータ取得、ローバ電力系の性能評価、新型サスペンション機構と走行路面の評価、ほかの飛行型/小型高速ローバとの連携探査の検討、レーザー誘起ブレークダウン分光計(LIBS)による火山噴出物の岩石表面の組成分析などの試験を実施した。

結果として、いずれの工学的な試験も良好に実施することができ、またLIBSによる科学ミッションの運用上の課題を洗い出すことができた。月惑星探査ローバの耐環境性のあるセンサやアクチュエータの要素技術、噴火時の運用方法などについて、このようなフィールド試験を通じて洗練し、将来の月惑星表面探査のみならず、火山地域である伊豆大島の無人観測に貢献することを目指している。今後、事前シミュレーションとの比較検討、自律移動のためのアルゴリズムの選定基準の策定などを十分に行い、火山地域でのローバの自律運用に向けた要素技術のさらなるロバスト化を目指している。

(大槻真嗣)

伊豆大島三原山裏砂漠における月惑星探査ローバのフィールド試験