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ISASニュース

小型科学衛星の進め方の見直しについて

No.382(2013年1月)掲載

近年、宇宙科学ミッションが高度化するにつれて、衛星が大型化して開発期間が長くかかる、コストが高くなる、したがって実施頻度が低くなる、という問題が生じてきました。そこで、「小型ながら特徴あるミッション」を、迅速かつ高い頻度で実現するために、「小型科学衛星」計画を進めています。

衛星を短期間、低コストで開発するためには、各衛星の設計をできる限り共通にすることが有効です。しかし、科学衛星に求められる要求は多様です。そこで、少ない変更で多くの科学衛星で対応できるよう、セミオーダーメイドの「小型科学衛星標準バス部」という考え方を導入しました。

さらに、平成21年度からは、「小型科学衛星シリーズ」としてプロジェクトを進めてきました。これは、複数のミッションを「シリーズ」としてまとめて進めることにより、衛星の開発をより効率化しようとする試みでした。この枠組みの中で、1号機はすでにフライトモデルの製作が進み、2号機ミッションも選定されました。

しかし、2号機の設計を進めていくと、少ないと考えていたバス部に対する変更が、コストに換算するとかなり大きくなることが分かってきました。2号機は、コストに見合った科学的成果が挙げられることは期待されています。しかし、コスト増のため、「シリーズ」という考え方を維持することは難しくなってしまいました。

そこで、今後は「シリーズ」というまとまりでプロジェクトを運営することは取りやめ、小型科学衛星1号機は「惑星分光観測衛星プロジェクト」、2号機は「ジオスペース探査衛星プロジェクト」という個別のプロジェクトとして進めることとなりました。また、これらにおいて「小型科学衛星標準バス」を用いることに変わりはありませんので、バス部の技術をプロジェクト横断的に担当する「小型科学衛星バスシステム技術チーム」がつくられました。

今回、小型科学衛星の進め方がこのように見直しに至った事実は真摯に受け止め、今後のミッションの選定方法、プロジェクトの実行方法は改善を図る必要があります。

小型科学衛星の次号機に向けて、現在も10を超えるワーキンググループが活発な検討・技術開発を進めています。これは、「小型科学衛星」に対しての期待が極めて高いことをうかがわせるものです。この期待に応えるべく、今後も小型科学衛星計画は発展させていきたいと考えます。

ただし、「小型ながら特徴ある宇宙科学ミッション」を創出するのは、決して容易なことではありません。小型科学衛星という新しい機会をフルに活用する、優れたミッション提案をぜひお寄せください。

(中川貴雄)