宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASニュース > 連載の内容 > ISAS事情

ISASニュース

「はやぶさ2」機械環境サーベイ試験

No.382(2013年1月)掲載

小惑星探査機「はやぶさ2」では、2011年度にCDR(詳細設計審査)フェーズを終了し、2012年度に入って構体パネルの製造を行い、2012年11月中旬から2013年1月下旬にかけて「機械環境サーベイ試験」を実施しています。

「はやぶさ2」の構造系は、「はやぶさ」初号機を踏襲しており、構体の強度や剛性は実証済みという前提で開発が進められています。打上げロケットがM-VからH-IIAに変更され、機械環境条件も緩和されます。そのため、通常の衛星や探査機に対して行われる構造モデル試験のうち、構体の強度検証のための静荷重試験や正弦波振動試験は行わず、搭載機器の機械環境条件計測のための音響試験と衝撃試験、構体の基本的な構造特性を確認するための低レベルのモーダル振動試験を実施します。ただし、ロケットの変更だけでなく、搭載機器の追加や配置変更などもあり、初号機と同じだから大丈夫というわけには、なかなかいきません。なお、今回の試験と構造モデル試験との違いを表すため、「機械環境サーベイ試験」という言葉が新たにつくられました。

一連の試験ではまず、相模原キャンパスにおいて構体の組み立てを行った後、サンプラの弾丸を発射するプロジェクタ衝撃試験、「はやぶさ2」で新たに搭載され小惑星表面にクレーターを形成する衝突装置の分離衝撃試験、探査機とロケットを結合するPAFの分離衝撃試験、それに構体のモーダル振動試験を、12月末までに実施しました。年明けには場所を筑波宇宙センターに移し、H-IIAの打上げ時のランダム振動環境を計測する音響試験、太陽電池パドル展開時の衝撃を計測するSAP保持解放衝撃試験を行います。これらの試験スケジュールは、ほかのプロジェクトとの試験設備の調整、試験に供する部材の入手状況、「はやぶさ2」特有の火工品を使った試験の安全性などのさまざまな検討の結果、組まれたものです。ご尽力いただいた関係各位に感謝します。機械環境サーベイ試験終了後、直ちに一次噛合せ試験に移行する予定です。

(奥泉信克)

衝撃試験準備作業中の「はやぶさ2」構体