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ISASニュース

メダカの長期飼育実験開始

No.381(2012年12月)掲載

10月、メダカが国際宇宙ステーション(ISS)へと打ち上げられ、骨代謝メカニズムの解明のために宇宙で長期飼育を行う実験が始まりました。1992年に毛利衛宇宙飛行士がスペースシャトルでコイを使った宇宙酔いに関する実験を行ってから20年目です。この間、日本は独自に宇宙で水棲生物実験を行うための装置開発を続け、キンギョやメダカ、ガマアンコウを用いた4回の宇宙実験を行うとともに、これらの技術をもとにISSでメダカの長期飼育を行うための実験装置開発を行ってきました。

スペースシャトルでは2週間程度の実験しかできませんでしたが、ISSでは2ヶ月という長期実験が可能です。そのために、水槽内のメダカに自動で給餌を行う機構やメダカの採取器具などを新たに開発しました。また、装置は種子島から打ち上げますが、メダカは遠いカザフスタンの砂漠の中、バイコヌール宇宙基地から小さい輸送容器に入れて打ち上げ、ISSで水槽に移し替えるという、これまでにない方法を採りました。打上げ約2週間前に日本からバイコヌール宇宙基地までメダカを手持ち輸送して射場で飼育を続け、ソユーズで打ち上がるのを見届けてすぐに帰国、筑波宇宙センターでISSに到着したメダカが水槽に移されるのを見守りました。メダカにとっても大変な旅だったはずですが、すべてのメダカが無事にISSに到着し水槽の中で泳いでいる姿に、ようやく一安心でした。その後は、地上と同様によく餌を食べ、活発に泳ぎ、成長しており、初めての長期飼育実験は順調に進んでいます。

宇宙では骨密度が減少することが知られています。しかしそのメカニズムについてはよく分かっていません。この実験では骨芽細胞が赤色、破骨細胞が緑色に発光するトランスジェニックメダカを用いて、破骨細胞が活性化されることで骨吸収が増加する可能性を、骨芽細胞との相互作用を含めて解析します。この実験によって、骨代謝メカニズムの解明が進み、将来宇宙での長期滞在を可能にするための基礎情報が得られると期待されています。

(内田智子、谷垣文章、矢野幸子)

メダカへの給餌(飼育実験開始13日目)