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ISASニュース

「宇宙学校・とうきょう」開催

No.381(2012年12月)掲載

快晴の11月3日、東京大学駒場キャンパスで「宇宙学校・とうきょう」が開催されました。毎年会場が変わらない宇宙学校はここだけです。記録によれば、筆者が前回講師を務めたのは11年前でした。当時のことはあらかた忘れてしまいましたが、年配の方の質問に苦慮したことが記憶に残っています。集合時間の12時ごろに会場に着いて、控え室で講義の準備をしている間にもどんどん受講者がやって来ます。13時ちょうど、阪本成一校長先生のあいさつで、いよいよ宇宙学校の始まりです。1階席はぎっしり満席。2階席もほとんど埋まっている状態です。

1時間目、筆者はトップバッター。赤外線で見える星の話をしました。結構熱心に聞いていただけた、と手応えはあったつもりなのですが、続く安倍正真先生の小惑星探査の講義が終わって質問タイム。やはり「はやぶさ」にはかないません。一斉に挙がった手は、ほとんどが小学生くらいの子どもたちです。質問は「はやぶさ」や「はやぶさ2」、さらに「はやぶさMk2(マークツー)」まで。前もって考えてきたのか、今思い付いたのか、みんな詳しいこと。答える方も必死です。なかなか順番が回ってこないものですから、必死でノートを振ったりカバンを振ったり自己アピール。

映画を挟んで2時間目は工学の先生方の授業です。丸祐介先生は宇宙旅行について。「1人200万円で宇宙旅行に行きたい人!」の問い掛けに、みんなの手が一斉に挙がりました。「みんなが宇宙に行けるようになるためには、宇宙に行くための用事をつくる必要がある」との言葉を、皆さんはどう受け取ったでしょうか?最後の船木一幸先生の授業は、さらに夢の世界。隣の恒星ケンタウルス座αまで50年かけて(しかも片道切符!)行こう、ということなのですから。反物質エンジンまで登場してまるでSFのような世界ですが、「趣味」の研究とはいえ、このようなことを真剣に考えている研究者がいるのだ、ということ自体が驚きだったのではないでしょうか。

終了時のあいさつでも言ったのですが、筆者はとにかく飛び交う質問(数十あった質問のほとんどは子どもたちからのものでした。お一人、お母さん頑張りました)のレベルの高さ(講師をうならせる質問も多々)、そしてそれを伝えるしっかりした言葉に感心しました。理科離れだとか、学力低下とかいうことを聞きますが、日本の将来も決して悲観するものではないな、と強く思った文化の日の午後でした。

(山村一誠)

今年もたくさんの子どもたちが集まりました