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ISASニュース

観測ロケットS-520-28号機噛合せ試験終了、そして打上げへ

No.381(2012年12月)掲載

12月中旬に打上げ予定の観測ロケットS-520-28号機の噛合せ試験が、11月12日から22日まで相模原キャンパスにおいて行われました。

今回の観測ロケット実験は「微小重力環境を利用した均質核形成実験(宇宙ダストと炭酸塩結晶の生成)」です。ロケットの弾道飛行で得られる数分間の低重力環境を利用して、結晶化の最初の段階である核形成の様子を対流のない環境で観察・計測し、その物理を理解するとともに、将来的には国際宇宙ステーションなどでの長時間微小重力実験に向けた基礎データを得ることを目的とします。そのため、以下の2種類の実験を並行して実施します。

(1)微小重力環境を利用した宇宙ダストの核形成再現実験(DUST):微小重力状態になってから宇宙空間を模した真空容器中で鉄などの蒸気を噴出し、そこから3種類の固体微粒子(ダスト)がどのようにして形成されるのかを、温度・濃度分布の光学的リアルタイム計測により求めます。そのため、2波長干渉計、実像観察装置、試料加熱用真空容器、放射温度計、圧力計などを組み込んだ装置を3組搭載し、順次実験を行います。

(2)微小重力環境を利用した炭酸カルシウム結晶の均質核形成メカニズムの研究(CAL):この実験は、空気中の二酸化炭素を削減するため地中に炭酸カルシウム結晶として効率よく固定・貯留する技術に関する日米の国際共同研究の一環として実施されます。具体的には、炭酸イオンとカルシウムイオンを含む2つの水溶液を小型の反応セルの中で混合し、炭酸カルシウムの結晶核が形成される速度の濃度依存性を測定します。1つの反応セルは、2液混合、光散乱測定、インピーダンス測定のための小型デバイス群を内蔵しています。そして、微小重力状態になる直前に合計12組の反応セルの中でそれぞれ水溶液を混合して、以降に核形成が起こる過程を光学的、電気的に計測します。

噛合せ試験は11月12日の構造機能試験棟への搬入に始まり、搭載装置の机上噛合せおよびロケット頭胴部への組み込み、動作チェックを経た後に、飛翔体環境試験棟にて頭胴部のダイナミックバランス調整、振動・衝撃試験がスケジュール通りに進められました。以降、頭胴部、モータ、尾翼部などのフライト品が内之浦まで運ばれてフライトオペレーションを迎える予定です。

(稲富裕光)

観測ロケットS-520-28号機噛合せ試験の様子