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ISASニュース

小型科学衛星1号機(SPRINT-A)の総合試験始まる

No.380(2012年11月)掲載

小型科学衛星シリーズの1号機(SPRINT-A)として開発を進めてきた惑星分光観測衛星の総合試験が、相模原キャンパスのC棟クリーンルームで行われています。この衛星は、極端紫外線により金星、火星や木星といった惑星を観測する計画で、2013年夏にイプシロンロケット初号機により内之浦から打ち上げられる予定です。総合試験は打上げに向けた開発の大きな難関ともいえるイベントで、実際に宇宙に行くフライト品のコンポーネントを順次組み立てながら試験を行っています。

本衛星は、柔軟性高く、かつ効率的な衛星開発を目指したSPRINTバスシリーズの最初の衛星として開発をスタートしました。このSPRINTバスの考え方は、関係者一同の開発にかける意気込みもあって、一定の広がりを持ち始めています。小型科学衛星シリーズの2号機として選定されたジオスペース探査衛星では一時期、科学要求に対応するための追加経費が高いということで議論が巻き起こりましたが、現在はSPRINTバスを使用した単独プロジェクトとして開発が始まっています。また、経済産業省のASNARO衛星も、共同研究により同一のバス・アーキテクチャを採用する兄弟衛星で、開発が進められています。

SPRINTバスは、一般に「標準バス」と称されるものです。標準バスとは同じ設計が複数の衛星で共有されるもので、従来、標準バスは既製服のような存在でした。それに対して、SPRINTバスは、セミオーダーメイド的に柔軟にさまざまな要求に応えることができる衛星開発を可能にしています。具体的には、標準的なプラットフォーム部分に、追加でいろいろな機能を付加できるように最初から工夫が施されています。この衛星のケースでは、「ガイドカメラによるフィードバック制御」という機能を追加することにより、大型衛星を見渡してもトップレベルの5秒角という非常に高い姿勢精度を達成します。

私たちは、個々の衛星での科学観測とともに、将来のバス技術獲得に向けた布石も重要と考えています。そのため今回の衛星では、将来の高性能電源技術の獲得に向けたオプション実験として「NESSIE」も搭載する予定です。

総合試験の現場もこれから佳境に入ってきます。プロジェクトチームメンバーが一丸となって2013年夏の打上げに向けて開発を進めています。ぜひご期待ください。

(澤井秀次郎)

総合試験中の小型科学衛星1号機(SPRINT-A)