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ISASニュース

「きぼう」のユーザー運用エリア大にぎわい

No.380(2012年11月)掲載

現在、国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟では、今までになく多くの実験が同時進行で行われています。船外実験プラットフォームでは、継続的に全天X線観測を行っているMAXIを筆頭に、宇宙ステーション補給機「こうのとり」3号機(HTV3)で打ち上げたMCE(ポート共有実験装置)のチェックアウト、各ミッション機器の機能確認・実験などが行われています。

船内実験室では、日本の開発した実験ラックが3つ同時に稼働しています。1つは流体実験ラックで、2008年の打上げ以降、流体物理実験や結晶成長実験のために休みなく使用されています。現在、流体ラックでは、タンパク質結晶成長をリアルタイムで観察する実験(NanoStep)を実施中です。

流体ラックの隣に設置されている細胞ラックも2008年に打ち上げられ、すでに10以上の生物系の実験に使われてきました。10月から植物の抗重力反応機構を調べる実験(Resist Tubule)が始まりました。早くも第一弾のサンプルをドラゴン補給船運用1号機で地上に持ち帰りました。

3番目が、2011年に打ち上げられた多目的実験ラックです。その名の通り、多目的に使用できるさまざまなインターフェースを備えていますが、今回は水棲生物実験装置をセットします。10月末にソユーズ宇宙船でメダカが到着し、数ヶ月にわたる長期飼育を開始しました。

ラックは使いませんが、宇宙ステーション内の微生物の繁殖状況を調べる実験(Microbe)も実施しています。これはシリーズものの実験で、時間とともに細菌やカビの種類・量がどのように変化するかを追っています。

各実験の運用中には、実験チームが筑波宇宙センターの「ユーザー運用エリア(UOA)」に陣取り、リアルタイムで送られてくるデータや画像を確認します。多くの実験が行われているので、UOAはいまだかつてないほどの盛況ぶりです。筆者もNanoStep実験の運用中です。宇宙ステーションから撮影されている地球の画像を大画面で見ながら仕事ができるなんて、宇宙機関ならではの幸せです。

(吉崎 泉)

NanoStep実験の準備作業を行う星出彰彦宇宙飛行士