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ISASニュース

「はやぶさ2 」プロジェクトの体制を強化

No.380(2012年11月)掲載

今年9〜10月、小惑星探査機「はやぶさ2」プロジェクトの体制を強化しました。この強化の狙いと内容についてご紹介します。

私は、昨年8月、月・惑星探査プログラムグループ(JSPEC)統括リーダーに着任して以来、「はやぶさ2」について、組織内外のさまざまな方との意見交換、各種委員会、審査会・設計会議などを通じて、状況を理解することに努めてきました。「はやぶさ2」に関してあらためて認識したことは、以下の3つの必要性です。(1)高い技術的ハードルへの対処を厳しい打上げスケジュールやリソース制約の中で行うことが必要、(2)固体惑星科学コミュニティからの支持・協力を全面的に得ることが必要、(3)政策・社会との関わりの中で(1)と(2)を実現するためには、より上位の視点で広範な役割を担う多面的マネジメント体制の構築が必要。

「はやぶさ2」の成否は、宇宙研を含む相模原キャンパスのミッション全体と日本の固体惑星科学の将来に多大な影響を与えることになる、という複数有識者の危機意識は、私にも十分納得できるものでした。ミッション成功を至上の目的として、(1)〜(3)をどういう姿で実現すればオール相模原での協力を強化しプロジェクトを成功に導けるかについて、宇宙研文化を熟知する理学・工学や科学コミュニティのキーパーソンとも意見交換を行ってきました。若手の登用・育成にも配慮しつつ短期間で(1)〜(3)を実現するためには、よりシニアレベルによるマネジメントなど総力戦の体制を組んで進めることが必要という認識のもと、JAXA経営層の理解・決断と宇宙研所長・幹部との協調により、今回の体制強化が実現しました。

(3)については、JSPECプログラムディレクターの國中均教授がプロジェクトマネージャーに、また準天頂衛星プロジェクトのサブマネージャーを務めた経歴を持つ稲場典康次長が経営企画部推進課長からプロジェクトマネージャー代理に着任し、双璧でプロジェクトをまとめています。

(2)については、日本惑星科学会長であり名古屋大学教授の渡邊誠一郎先生(宇宙研客員教授)に誠心お願いして、プロジェクトサイエンティストの重責を引き受けていただきました。渡邊先生は、9月上旬から早速プロジェクトサイエンティストチームを結成して、より多くの一線のサイエンティストの参画を実現し精力的に陣頭指揮を執っておられます。

「はやぶさ2」の前プロジェクトマネージャー吉川真准教授は、新設のミッションマネージャーに着任しました。マネジメントの雑用が軽減され、探査でキーとなるミッション運用シナリオの構築、目標天体の分析、プロジェクトサイエンティストの主要メンバーとしての活動など、「はやぶさ」プロジェクト以来の実績・経験と専門性を活かせる役割を担っています。

(1)については、宇宙研工学とJSPECとの連携と、筑波宇宙センターの開発部門・研究部門の協力により、オールJAXA体制でサブシステム・コンポーネントの体制強化を段階的に進め、11月1日に体制強化が仕上がりました。

「はやぶさ2」は、2014年12月の打上げに向け現在フライト実機を製作中で、いよいよ来年1月には第1次の全体噛合せ試験を開始します。プロジェクトに対する関係各位のこれまでのご支援にお礼申し上げるとともに、よりいっそうのご理解・ご支持を賜りますようお願いいたします。

(山浦雄一)