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ISASニュース

観測ロケットS-310-41号機打上げ成功

No.378(2012年9月)掲載

上空で空気ブレーキを展開して効率よく減速する、新しい大気圏突入技術の実証を目的とした観測ロケットS-310-41号機の打上げが、8月7日16時30分に内之浦宇宙空間観測所にて行われました。カバーが外れると、搭載した小型ボンベからガスが送られて浮き輪型フレームが展開し、フレームと本体の間に円錐台状の膜面エアロシェルが張られる仕掛けです。重量は15.6kg、展開時の直径は約1.2m。実験機の概要についてはISASニュース2012年5月号も併せてご参照ください。

鹿児島県を襲った記録的豪雨による7月の打上げ延期から、このような短期間で再開できるとは、関係者のご尽力に頭が下がります。準備も順調で、全体打ち合わせ後、ロケット側に私たちのカプセルを引き渡しました。折あしく真夏ということで、外気温上昇で搭載の小型ボンベが暖まり過ぎ、ガス系に問題が出る恐れがありました。そこでエアコンの効いた部屋に入れてもらったり、保冷箱をつくってもらったり、ランチャー上で冷たい窒素ガスを細パイプで導入してもらったりと、すっかり箱入り娘状態でした。休日返上でお世話をしてくれた方々にひたすら感謝です。

打上げ60秒後、ノーズコーン開頭でカプセル搭載カメラからの画像モニターに光が差します。そして90秒でカバーを開放するとガスが注入され、予定通りエアロシェルの展開がビデオカメラで確認されました。100秒でカプセルはロケットから分離射出されます。ロケット側搭載のカメラ画像では、次第に離れていくエアロシェルが太陽光を受けて煌々と輝いていました。その後、最高高度約150kmに達した後、落下飛行に入りました。高度約70kmで最高速度約1.3km/sに達した後、高度30kmでは100m/s以下に落ちて空気ブレーキの利きの良さを実証しつつ、打上げ約22分後(カプセル班以外からは、長い、長い、との声しきり)に着水、実験は今後の解析が楽しみな大量のデータや画像を残して無事、終了しました。

最後となりましたが、本ロケット実験の実施に当たりご協力いただいたすべての方に、この場を借りて心よりお礼を申し上げます。鈴木にとって17年ぶりの内之浦は、素晴らしい大気圏突入実験をプレゼントしてくれました。

(東京大学教授/鈴木宏二郎、山田和彦)

ロケットから分離されたエアロシェルの全景(カプセル分離から3秒後、高度約110km、写真手前が地球側)