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ISASニュース

糸川英夫生誕100年記念企画展を開催

No.377(2012年8月)掲載

最近宇宙研では地元相模原市との連携をさらに強めていますが、道を隔てて隣接する相模原市立博物館との共同事業もますます盛んになってきています。

代表的なものが、2010年夏の「はやぶさ」帰還カプセルの世界初公開です。相模原キャンパスの特別公開に合わせて実施したところ、わずか2日間の会期にもかかわらず約3万人の方にお越しいただくことができました。相模原キャンパスが特別公開でごった返す中、それだけの数の見学者を受け入れることができたのは、市立博物館と市の強力なサポートがあってこそのことです。これを受けて2011年夏には、特別展示室での企画展「宇宙とつながる私たち−探査機に託したメッセージ−」を実施。研究・開発の成果よりむしろ国民と宇宙のつながりを中心に据えて、地元や一般国民の視点からの太陽系探査とのつながりについて取り上げていただきました。

ありがたいことに市立博物館からは、今年以降も特別公開に合わせて夏には宇宙関連の企画展を実施したい旨の提案をいただきました。今年どうしても取り上げておきたいことといえば、7月20日に生誕100年を迎えた「日本の宇宙開発の父」こと糸川英夫先生、そして2月2日に起工式から50年を迎えた内之浦宇宙空間観測所です。そこで、これらを記念するために市立博物館と共同で、7月14日から9月2日まで企画展「宇宙科学の先駆者たち〜糸川英夫と小田稔〜」を開催することにしました。当時の品々やエピソードを紹介することで、日本の宇宙工学と宇宙理学をリードした先駆者の業績に触れ、教訓とすることを目指してのことです。

今回の企画展で展示物のメインになるのは、ペンシルロケットや、すだれコリメーターなどです。ところがよく知られているように、宇宙研ではペンシルロケットの実機を1機も所有していません。そこで、これを機に現存する個人所有のペンシルロケットなどを1ヶ所に集めて皆さんに見ていただこうと考えました。幸いにして所有者のご協力を得ることができ、多数のペンシルロケットやベビーロケットなど日本の初期の宇宙開発に関わる実物や、X線天文学を飛躍的に進めたすだれコリメーターの試作品などを展示することができました。その陰には多くのボランティアの協力があります。

また、広い特別展示室を活かして、2005年のペンシルロケット50周年記念水平発射再現実験で使用されたランチャーやターゲットも展開されています。

展示品の中には、宇宙研の敷地内を探していて出てきたものもいくつかあります。中でも目玉は、幻のL-4Sロケット6号機に関連する部品。これに関する構造部品やロケットランチャーは国立科学博物館の目玉展示として展示されていますが、搭載機器類のいくつかは宇宙研に残されていました。個人が管理していた加速度計も発見されました。

今、JAXAでは、相模原キャンパス内に専用の展示館を設置すべく働き掛けを始めています。実現のあかつきには、これらの貴重な歴史的展示物を常設して、より多くの皆さんにご覧いただきたいと思っています。

(阪本成一)

東京・国分寺で実射された記録が残るペンシルロケット2機。共に個人蔵。

ペンシルロケット50周年記念水平発射再現実験の際に使われたランチャーとターゲット、そして再現実験で実射された機体17機。