宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASニュース > 連載の内容 > ISAS事情

ISASニュース

「こうのとり」3号機打上げ成功!

No.377(2012年8月)掲載

7月21日、 宇宙ステーション輸送機「こうのとり」(HTV)3号機が無事に打ち上げられました。「こうのとり」3号機には実験関連機器がぎっしり詰まっています。一番大きいのが、「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに設置される「ポート共有実験装置」で、主に地球大気などの観測に使われます。また、メダカなどを長期間宇宙で飼育する実験のために開発された水棲生物実験装置や、星出彰彦宇宙飛行士がロボットアームを使って宇宙に小型衛星を放出するプロジェクトで使われる衛星も、「こうのとり」に積み込まれています。

さて、今回ご紹介したいのは、NanoStepという実験です。タンパク質結晶の表面を、干渉計を用いて観察し、結晶成長条件によってその成長速度、表面の状態や結晶の品質がどう変わるかを詳しく調べようというものです。実験機器は今回の「こうのとり」で打ち上げられ、この夏から実験開始の予定です。タンパク質が古くなるといけないので、ぎりぎりのタイミングで試料の調製を行い、打上げの前の週に種子島宇宙センターで最終確認を行いました。タンパク質の種結晶をガラスの容器の中に接着させていますが、これが輸送時の振動などで落ちてしまっていないか、溶液が変に濁ったり漏れたりしていないか、ガラスの容器が割れていないかなどの確認を行いました。まったく問題なく、ほっとしました。

打上げの直前まで荷物の搭載ができるのは、実験担当者にとっては非常に助かることです(直前での荷物の引き渡しのことを、業界用語でレイトアクセスといいます)。しかし、すでにH-IIBロケットと「こうのとり」が接続し、ロケット組立棟の中で立ち上がっている状態で荷物を搭載することになるので、搭載できる荷物の大きさや重さ、個数が厳しく制限されています。今回のNanoStep機器に関しても、寸法や、人が運べる20kg以下の重さかどうかがチェックされました。

「こうのとり」の国際宇宙ステーション到着は7月27日。一足先に到着した星出宇宙飛行士たちの手によって荷物が運び込まれ、たくさんの新しい実験が始まります。

(吉崎 泉)

結晶確認作業の様子