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ISASニュース

あきる野実験施設近況

No.376(2012年7月)掲載

宇宙科学研究所あきる野実験施設は、旧敷地の駒場キャンパスに設置されていた耐爆実験室の代替え施設として1998年に設置されました。東京都あきる野市の住宅地から離れた山あいにあります。設置当初は、M-Vロケットの高度化に向けた固体ロケット推進技術に関する基礎研究が数多く進められ、成果を獲得してきました。JAXA統合後は、固体ロケットに限らず、液体・ハイブリッドロケット推進に関わる研究も実施されるようになり、主として宇宙輸送系に関する研究開発を行うための実験施設として運営されてきました。

施設は2階建てです。1階には耐爆機能を有する大実験室があり、建屋の半分を占めます。ロケットの燃焼試験などを行うため、燃焼ガスを排気する煙道が3ヶ所設けられ、煙道ごとに設置されるスタンドは実験の種類によって使い分けられています。大実験室で特徴的なのは小型真空槽で、宇宙環境を模擬した真空でのロケット燃焼試験を行うことができます。そのほか、クレーンや簡易な工作機械が設置されています。そして、大実験室での作業を支えるのが1階にある2つの実験室です。主として実験の準備を行う部屋で、計測機器を設置して実験データを取得します。2階には化学系の実験室があり、ロケット推進薬の少量試作や化学分析を行うことができます。

2010年に「運用等規則」が制定され、所内での位置付けが明確化されました。さらには2011年に発足した大学共同利用委員会のもとで、JAXA職員だけでなく大学の研究者にも門戸を開く新しい形態を取ることになりました。今年度から大学共同利用委員会のもと「あきる野委員会」が発足し、新しい一歩を踏み出します。相模原キャンパスから車で1時間強かかる不便さはありますが、静かな自然の中で落ち着いて実験研究が行えます。興味のある方はぜひ一度、足を運ばれて当施設をご覧ください。

(堀 恵一)

あきる野実験施設大実験室内の様子