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ISASニュース

平成24年度第一次気球実験

No.376(2012年7月)掲載

平成24年度第一次気球実験は、5月28日から連携協力拠点大樹航空宇宙実験場において実施されました。例年より10日ほど遅い実験開始だったのですが、今年の道東地方は連日最高気温が10℃程度で、地元の皆さんとのあいさつが「今年は寒いね」から始まる毎日となりました。

6月3日には、宇宙線反粒子の高感度探索によってその起源に迫り、超対称性粒子などの宇宙を満たす暗黒物質の候補の対消滅の兆候を探ることを目指した、日米国際共同実験GAPSのプロトタイプ測定器の性能評価試験を実施しました。気球の飛翔環境における測定器の基本性能の評価のためのデータの収集を行い、半導体検出器のエネルギー分解能などの性能評価、半導体検出器の冷却機構などの熱設計の評価、宇宙線バックグラウンドなどの環境評価などに資するデータを取得することに成功しました。今後は、得られたデータの解析を進め、本格観測に向けた測定器の開発や詳細設計に反映することになります。

続いて6月9日には、網を掛けるという新しい手法により軽量で高耐圧性能を実現しようとする体積3000m3のスーパープレッシャー気球(SPB)と体積1万5000m3のゼロプレッシャー気球(ZPB)から成る、タンデム気球システムの飛翔性能試験を実施しました。SPBの内外圧差が使用耐圧(大気圧の0.7%)の8割に達した時点でSPBからヘリウムガスの漏れ始めたため、耐圧性能の確認には至りませんでしたが、SPBに内圧がかかった状態で日没を模擬してZPBの浮力を減じた際のシステム全体の挙動など、タンデム気球システムの開発に必要となるデータを取得することができました。また、タンデム気球システムに特有の放球方法や飛翔運用に関する今後の課題も明らかになりました。

予定した2実験を実施して第一次気球実験を終了しました。ご協力いただいた関係者の皆さまに深く感謝致します。なお、引き続き第二次気球実験を8月初旬から予定していますのでご期待ください。

(吉田哲也)

スライダー放球装置により屋外に移動された放球直前のタンデム気球