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ISASニュース

「はやぶさ」再突入カプセル巡回展示が終了

No.375(2012年6月)掲載

社会現象化したかとも思える小惑星探査機「はやぶさ」。夜空に燃え尽きた探査機のイメージが鮮烈ですが、探査機を惑星間空間に送り出す強力なロケットと、自律的に航行できる探査機、大気圏再突入時の灼熱に耐えるヒートシールド、そして着陸のダメージを軽減するパラシュートという、いわば4人の走者によるたすきリレーでした。そして当初予定を大幅に超える7年間をかけてゴールの地球へとつないだたすきが、小惑星イトカワの表面物質を収めたサンプラーコンテナです。打上げ時総重量140トンのうち、惑星間空間を旅して無事地表にたどり着いたのは、わずか17kg程度。その中に入っていたごく微量の表面物質は、JAXA相模原キャンパス内に設置された特別な施設の中でエキスパートたちによって回収され、太陽系の誕生の謎を解き明かすための次の新たな旅を始めました。

たすきリレーを担った走者のうち、ロケットと探査機本体は失われましたが、ヒートシールドとパラシュート、そしてサンプラーコンテナからなる再突入カプセルは残りました。惑星間空間を旅して帰還したこれらの実物の持つ迫力に直接触れていただこうと、2010年7月末に行われたJAXA相模原キャンパス特別公開での公開を皮切りに、受け入れ施設の公募・選定を経て、同年11月からは本格的に巡回展示を開始、そして2012年4月3日の愛知県刈谷市での公開をもって全行程を終了しました。最終的には全69会場で、延べ89万人の皆さまにご覧いただけたようです。ご来場いただいた皆さま、展示実施にご協力いただきました主催者や関係各位にこの場をお借りして感謝申し上げます。

このカプセルは貴重な研究資料でもあり、当面は「はやぶさ」後継機の開発などのための研究へと回されます。その後の予定などについてはJAXA内で議論が進められているところです。研究の成果とともに今後の展示予定についてもご期待ください。

(阪本成一)

「はやぶさ(8823)」に掛けて表彰された88万2300人目の来場者とご家族
(愛知県刈谷市総合文化センターにて)