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ISASニュース

観測ロケットS-310-41号機 噛合せ試験

No.374(2012年5月)掲載

宇宙空間から地上へ物資や人員を帰還させる際に、大気圏に突入した宇宙船のまわりの空気が高温となり、火の玉状態となって機体表面が厳しい加熱を受けることは、「はやぶさ」カプセルの飛行映像や、回収されたカプセルをご覧になった方には実感として理解できるのではないかと思います。これは、「空力加熱」と呼ばれる現象で、大気中を飛行する機体に高速でぶつかった空気の運動エネルギーが失われ、熱エネルギーに変わるために起こります。

この空力加熱を低減させるために、ガスボンベを使って浮き輪状の円形フレームを膨らませて円錐台状のエアロシェル(空力減速用の傘)を展開する方式を開発しました。大面積のエアロシェルによって空気密度が低い高高度でも空気ブレーキが効き、大気が濃くなる前に十分な減速が得られ、空力加熱を低減させます。これまで大気球を使った落下飛行には成功していますが、観測ロケットS-310-41号機実験では大気圏外から再突入する超音速飛行の実証を行います。耐熱布製のエアロシェルを収納した直径30cm足らずの実験機が、上空で直径約1.2mの傘を広げ、最大マッハ数約4.5で超音速飛行をします。

この観測ロケット実験の噛合せ試験が、4月に相模原キャンパスの構造機能試験棟を中心に行われました。次ページの左写真は、すべての機器をロケット内部に搭載し、最後にロケットの外壁を取り付けている様子です。この後、ロケット頭胴部全体での振動試験、衝撃試験を実施して、その機能に問題ないことを確認しました。

右の3枚の写真は展開試験の様子です。実験機は、エアロシェルが収納された状態でロケットの最上部に搭載されています。打上げ後、ノーズコーンを開いてエアロシェルを展開し、分離射出機構により放出されます。この飛行実験を成功させることで、地球への帰還だけではなく、火星など大気のある天体に着陸探査機を送るための新しい技術が拓かれるものと期待しています。

(東京大学教授/鈴木宏二郎、山田和彦)

観測ロケットS-310-41号機の噛合せ試験(左)と展開試験の様子