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ISASニュース

「宇宙最初の星を探査する」ロケット実験CIBER第3回打上げ成功

No.374(2012年5月)掲載

赤外線の宇宙背景放射の観測を目的とするCIBER(Cosmic Infrared Background ExpeRiment)の装置を搭載したNASAの観測ロケットが、2012年3月22日03時00分(米国山岳部標準時)、ニューメキシコ州ホワイトサンズの実験場から無事に打ち上げられました。最高高度は326kmに達し、425秒間にわたって良好なデータを得ることができました。CIBERに関しては、幾度も『ISASニュース』に記事を掲載していただき、そろそろおなじみになってきたものと期待しています。今回は、2010年8月号で紹介した第2回実験の後、回収した装置を改造して行った第3回実験の成功を報告します。

我々の研究の目的は、宇宙が始まって数億年の時代に生まれたとされる宇宙最初の星々が放射した紫外線を、現在までの宇宙膨張により波長が約10倍にまで伸びた近赤外線の宇宙背景放射として捉えることです。CIBERの初回実験はいろいろ問題がありましたが、その反省のもとに行った前回の実験は、かなり満足のいくものとなりました。実際に、観測データの解析を進めたところ、宇宙背景放射のスペクトルに宇宙最初の星の兆候が見えてきたのです。

前回の結果は別の機会に紹介させていただくとして、今回はさらに研究を進めるため、観測値の大部分を占める黄道光(惑星間ダストの太陽光散乱)をその偏光スペクトルから判別することで、宇宙最初の星のわずかな成分を正確に取り出すという、例のない観測を試みました。前回実験でも活躍した大学院生の新井君やポスドクの津村君らが中心となり、米国に渡り偏光装置の組み立てや性能評価を行ってきました。しかし、勇んで実験場入りした打上げ予定の2月は、ロケットや気象の問題により打上げが2度も延期されてしまいました。今期の打上げは難しいかと覚悟しましたが、最後の機会に打ち上げることができたのです。今回のデータの解析により、宇宙最初の星々の理解がさらに進むと期待しています。

本研究に協力いただいた皆さまに感謝致します。今回も装置回収に成功し、その再利用による次回実験を計画しています。今後ともご支援よろしくお願いします。

(松浦周二)

打上げを控えたロケットの前にて実験チームの記念撮影。ホワイトサンズ実験場にて。