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ISASニュース

「有人月探査を見据えた科学・利用ミッションワークショップ」開催

No.374(2012年5月)掲載

3月8日、「有人月探査を見据えた科学・利用ミッションワークショップ」が、月・惑星探査プログラムグループ(JSPEC)主催、宇宙理学委員会共催で開催されました。筆者もプログラム編成などでお手伝いさせていただきましたが、大学、高校、官公庁、企業とさまざまな分野から、会場が満杯になるほどの参加があり、月周回衛星「かぐや」の成果や、科学・利用を経て将来の有人月探査に至る一連の月探査活動への関心の高さを知りました。

国際的な枠組みでは月は次期有人探査の主要な目的地として位置付けられており、有人による月の科学探査・利用ミッションは「かぐや」を成功させた日本がイニシアチブを発揮できる分野の一つとなっています。しかしながら、「かぐや」のデータの質の高さや科学的成果が、なかなか知られていないようです。そこで今回のワークショップではまず、「かぐや」のデータ処理や科学解析の最前線で活躍する新進気鋭の若手研究者たちに、データの公開状況や成果を話していただきました。素晴らしい講演で、アンケートには「『かぐや』の成果に感銘を受けた」、「『かぐや』で得られた科学的成果が非常に革進的であることを学んだ」といった声が多数寄せられ、日本の月科学におけるアドバンテージを少しは分かってもらえたかもしれません。将来のミッション提案の講演も「月科学と有人探査を結び付ける国内会議は珍しく、全体を見渡せてよかった」、「大変充実した内容で、理学面、工学面からも多くの話題提供があってよかった」と好評を博しました。

日本の有人宇宙活動と月科学の関係は、新しい時代に入りました。人が宇宙へ行くことは、人類の可能性を広げることです。科学は、人が宇宙へ行くとき、その知見と動機を与えるものだと思います。人が地球のまわりを越え、より遠くを目指すとしたら、地球に最も近い重力天体である月こそが、重要かつ有意義な場所であることは間違いないでしょう。今後の月科学、月探査において、「有人」を意識して進めることは、宇宙科学研究関係者にとってさらに重要になるはずです。

(春山純一)

有人月探査の想像イラスト