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ISASニュース

イプシロンロケット模擬射点音響環境計測試験、第3シリーズ

No.374(2012年5月)掲載

模擬射点音響環境計測試験(Scaled-model Measurement for Acoustic Prediction:SMAP)は、42分の1サイズのミニチュア発射台を製作し、同比率の小型モータを燃焼させて、音響環境を計測する試験です。2011年4月に第1シリーズ(SMAP-1、『ISASニュース』2011年6月号にて報告)、7月に第2シリーズ(SMAP-2)を実施してきました。今回ご報告する第3シリーズ(SMAP-3)は、目標とする音響低減を満足する発射台形状を選定する目的で、2012年4月5〜15日に能代ロケット実験場で実施しました。

イプシロンロケットプロジェクトチーム、情報・計算工学センター、航空プログラムグループ、宇宙科学研究所で構成される実験班メンバーは、SMAP-1から同じ顔触れです。試験準備の進め方、実施における注意点・経験などが共有され、また天候に恵まれたことも手伝って、順調に試験を進めることができました。ただし、4月12日午後の試験結果で予測していた音響低減効果が出ず、発射台設計陣は窮地に陥りました。しかし、SMAP-1からこれまでに積み重ねた計12回の燃焼試験のデータ、これまでの検討で得た知見などを総動員して検討し、翌日の試験の発射台形状を決定することにしました。翌13日(の金曜日!)、スタンド班に特急で作業いただき、重苦しい空気の中で燃焼試験を実施しました(写真)。結果は……、良好!目標をほぼ満足する発射台形状を見いだすことができ、SMAPシリーズ最大の危機を乗り越えました。このときの緊張感は、筆者にとって忘れられないものになりそうです。その後、設計に必要なデータを取得し、当初の目的を達成してSMAP-3および一連の試験シリーズは終了しました。現在、音響環境の評価と発射台の詳細設計を進めています。

最後に、この場をお借りして、宇宙研をはじめとした実験関係者各位に感謝致します。また、イプシロンロケットは今年度各種開発試験が目白押しで、宇宙研で実施されるものも多数あります。今後ともご支援のほどよろしくお願い致します。

(宇井恭一)

燃焼試験の様子