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ISASニュース

古川宇宙飛行士による報告会 開催

No.373(2012年4月)掲載

古川聡宇宙飛行士による宇宙環境利用ミッション報告会が、3月26日に相模原キャンパスにおいて開催されました。

古川飛行士の報告の前に、宇宙環境利用科学として、国際宇宙ステーション(ISS)を利用した材料とライフサイエンス実験について、学際科学研究系の稲富裕光先生と筆者がそれぞれ紹介をしました。

古川飛行士は、5ヶ月半にわたるISSでの長期生活や実験の様子などを約16分間にぎゅっと詰めたビデオで、ミッション報告をされました。カザフスタンの射場へ向かう途中でバスを止めてタイヤにおしっこをするという、ガガーリン宇宙飛行士からの伝説の儀式(?)は本当だった、という話から始まり、ISSの「きぼう」日本実験棟で古川飛行士が携わった物質・材料系、ライフサイエンスなど、さまざまな実験を次々と紹介されました。全天X線監視装置(MAXI)とアメリカの観測衛星との連携による巨大ブラックホールに星が吸い込まれる瞬間の観測は、とても素晴らしかったです。古川飛行士の専門である医学実験では、体を回しても眼振はあまり出ないが「目はグルグル回っていた」という、実に興味深い結果も報告されました。宇宙では歩く必要がないので足の裏が赤ちゃんのように赤く柔らかい皮膚になる様子や、多忙な中での食事風景や運動、掃除機のように吸い取る散髪やトイレ、歯磨き後に吐き出さず飲み込む様子など、面白い話も聞くことができました。キューポラという出窓から観察したオーロラの幻想的映像は、とても印象深いものでした。

参加者は約70名で多くの学生の方々が参加したこともあり、質疑応答が活発に行われました。科学的な質問だけでなく、「なぜ博士号を取ったか?」「なぜ宇宙飛行士になりたかったのか?」「日本版宇宙船に乗りたいか?」や、事務作業の効率と宇宙での作業効率についてなど、いろいろな角度からの質問が出ました。それらの質問に、古川宇宙飛行士は終止笑顔でユーモアを交えながら、ときには質問者のそばまで行って対話するように、丁寧に対応されていました。参加者の若いエネルギーにあふれた報告会となりました。

(石岡憲昭)

質問に答える古川宇宙飛行士