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ISASニュース

SMILES観測データの一般向け公開を開始

No.373(2012年4月)掲載

国際宇宙ステーション(ISS)に搭載され、2009年秋から2010年春まで地球大気の観測を行った超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(SMILES)について、宇宙研では観測停止後もデータ解析を継続してきました。これまで協力研究者に限って試験的なデータを提供してきましたが、最新版のデータが大気科学研究に使うに耐える精度を持つことが確認できたとして、2012年3月5日より観測データを広く公開しています。

SMILESの観測データは、観測開始後2年以上にわたり改良を繰り返し、試験データの提供も5回に上ります。これまではSMILES観測データの妥当性を確認する方法として、従来の人工衛星からの大気観測データと比較していましたが、最近では数値シミュレーションモデルとの比較を重視しています。モデルとはいえ、これまで得られた大気中の化学反応の知見をすべて取り入れ、大型計算機を使って膨大な計算を行うため、近年のモデル計算は「下手な観測よりも正確」といっていいくらい精度の高いものです。幸い、SMILESのデータは最新のモデル計算と数%の誤差で一致しており、上述の衛星観測データとの比較などより似通った結果を出しています。絶対の確信はまだ持てませんが、これらの結果から、SMILESの観測は従来の大気化学の理解を覆す可能性も秘めていると思われます。

今回公開したデータを使い、宇宙研の研究チームでもいくつかの研究論文を執筆しています。例えば、オゾンホール問題に代表される成層圏のオゾンの化学的な破壊に密接な関係を持つ、フロンガスなどが分解されて発生する塩素化合物について、これまでの観測やモデル予測による結果に一石を投じることを目指します。
SMILESデータ公開サイト
新しいウィンドウが開きます http://smiles.isas.jaxa.jp/access/indexe.shtml
データのダウンロードはユーザー登録制となっています。上記URLの申し込みフォームから登録情報を送信してください。

(佐野琢己)

今回公開したデータから得られる成果の例。2010年1月下旬にヨーロッパ上空で見られた、オゾンの特異な減少(上)と関連する塩素化合物(ClO)の増加(下)。