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ISASニュース

高頻度再使用ロケット実験機・第2次地上燃焼試験

No.373(2012年4月)掲載

将来、宇宙に物や人を大量に運ぶために宇宙輸送機を航空機のように頻繁に繰り返して飛ばすには、どのような技術が必要となるか。それを研究テーマとして、「再使用高頻度宇宙輸送システムの研究」を進めています。技術課題の抽出と運用経験の蓄積を目的とし、実際にロケットをシステムレベルで繰り返し地上運用する「高頻度再使用ロケット実験機・第2次地上燃焼試験」を能代ロケット実験場で3月に行いました。例年だと3月の後半にもなると日本海に面した能代も春の気配が漂い、防寒着なしで屋外作業を行うことができることもあるのですが、今年は最後の撤収日まで強風の中で雪が舞うような真冬の雰囲気での実験でした。

昨年、高頻度再使用ロケット実験機として初めての地上燃焼試験を行ったのですが、地上運用を効率的かつ安全に行うべく新しく取り入れたコンピュータによる自動運用(液体水素/液体酸素の充填など)にことごとく難航し、「高頻度」というにはまだまだという結果でした。昨年の教訓から自動運用のフローを見直し、エンジン予冷など新たな自動化も追加して1年ぶりに地上燃焼試験を実施しました。目標は昨年の半分以下の時間で運用することでしたが、運用の一部を自動化するだけでは複雑な操作の簡略化にはなっても大幅な時間短縮にはなかなかつながらず、バルブの動作確認や高圧ガス供給系の圧力設定などのやり方を大きく変えなければなりません。

また今回の実験では運用の効率化だけでなく、エンジンの異常を検知するために必要なヘルスマネジメント機能のための燃焼データの取得や、高性能化のための複合材ノズルの試験なども併せて行い、重要なデータが得られたとともに新たな課題も明らかになりました。

ロケットが宇宙から戻ってきてスペースポートに着陸し、簡単な点検整備の後、燃料を入れて2時間後にまた宇宙に向けて飛び立つ。そんなロケットをつくるにはどうしたらよいか。今回の実験で明らかになった新たな課題に取り組み、次へとつなげていきます。

(野中 聡)

地上燃焼試験FRV-2