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ISASニュース

「ひので」が太陽黒点半暗部形成の前駆構造を初めて捉えた

No.373(2012年4月)掲載

太陽を宇宙空間から観測して初めて実現できる観測の一つが、何十時間以上にわたる連続観測です。太陽観測衛星「ひので」は、連続観測によって、太陽黒点が誕生から大きな黒点に成長する様子を捉えることに成功しました。

これまで、半暗部のない小黒点(ポア)から半暗部を持つ黒点に成長する過程は、よく分かっていませんでした。「ひので」による観測の結果、小黒点の誕生直後に、それを取り巻く半暗部に相当する構造(前駆構造)が、小黒点のある光球ではなくその上空の彩層ですでに形成されていることを発見しました。

太陽光球内部から浮き上がってくる磁力線が形づくると考えられている黒点の成長において、磁力線が上空の彩層から下がってくることによって黒点の構造の一部が形づくられるとは、専門家も予想していませんでした。黒点は太陽面にはり付いた構造と考えられます。そして密度の高い光球でまず構造がつくられ、その結果として上空の彩層構造がつくられる、というのが自然な考え方です。今回の発見は、これを覆し、黒点の形成過程は彩層も含む立体的な磁場構造の成長過程として捉えなければならないことを明らかにしました。

この数年、数値シミュレーションによって計算機内で黒点の形成や構造を再現する研究が急速に進んでいます。しかし、半暗部の形成は、数値シミュレーションでもまだ再現できていません。また、半暗部の前駆構造の可視化は、フレア爆発などを引き起こす活動領域の発達を予測するのに役立つ可能性も示唆しています。

(清水敏文)

小黒点から黒点への成長。CaIIのH線で見た彩層(上)と可視Gバンドで見た光球(下)。