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ISASニュース

第2回「あかり」国際会議

No.372(2012年3月)掲載

2月27日から3日間、赤外線天文衛星「あかり」の観測成果に関する国際会議が韓国・済州島で行われました。「あかり」は昨年11月にそのミッションを成功裏に終えましたが、のこされた膨大なデータの解析は現在も続けられ、研究が行われています。第2回となる今回の「あかり」国際会議は、名古屋大学(グローバルCOEプログラム「宇宙基礎原理の探求」)とソウル大学の共催で行われました。参加者は日韓を中心に7ヶ国から121名に上り、観測天体の種類が幅広い「あかり」の研究会とあって、13のセッションが持たれました。

印象的だったことの1つは、米国の赤外線宇宙望遠鏡にはない波長5マイクロメートル以下の赤外線の分光観測による成果です。彗星に含まれる水や二酸化炭素などの分子、誕生したばかりの恒星のまわりの氷、核融合を起こせない小さな星である褐色矮星の大気に含まれるメタンや一酸化炭素などの分子、果ては100億光年以上離れたクェーサーの水素ガスまで、分光観測で得られた多くの成果が報告されました。ほかには、星間空間にある有機物、多環式芳香族炭化水素が出す特徴的な赤外線の観測結果も印象的でした。この有機物自身の性質を調べる研究だけでなく、特徴的な赤外線放射をプローブとして星間空間の物理状態を探ったり、また遠くの銀河で起きている星形成活動を測る指標に使われたりと、この有機物が出す赤外線はさまざまな研究で活躍しています。

今回の国際会議が行われた済州島は、観光と漁業の島です。店先の水槽にはアワビやサザエ、イシダイをはじめとする見慣れた魚貝たち、それに小さなネコザメらしき魚までがひしめき、市場では銀色に輝くタチウオやエイも売られています。済州島女性のシンボル的存在である海女の人たちが、毎朝おしゃべりしながら海に出ていく姿も見られました。寒さが厳しかった今年の冬。韓国最南端の済州島といえどもまだまだ寒く、その分、海鮮たっぷりのチゲがうれしいごちそうでした。

(村上 浩)

「あかり」国際会議のひとこま