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ISASニュース

第4回宇宙科学奨励賞 勝田哲氏、小林大輔氏に授与

No.372(2012年3月)掲載

財団法人宇宙科学振興会では宇宙理学・宇宙工学の分野で優れた研究業績を挙げた若い研究者を表彰し、宇宙科学分野の発展に寄与することを目的とした「宇宙科学奨励賞」を2008年度から始めました。今年度、その第4回として各界に推薦依頼をしましたところ、関係学会から多数の推薦が寄せられました。財団では各分野の有識者で構成される選考委員会を設け、候補者の審査・選考を進めていただきました。

この推薦に基づき当財団理事長の決裁を得て、今年度は宇宙理学関係で理化学研究所基礎科学特別研究員の勝田哲氏が研究課題「X線による超新星残骸の観測的研究」により、また宇宙工学関係で宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所助教の小林大輔氏が「宇宙機用LSIの動作を阻害する放射線パルスノイズの解明とモデル化」により、それぞれ受賞されることになりました。

勝田氏は米国の「チャンドラ」、ヨーロッパの「XMM-ニュートン」、日本の「すざく」の3つのX線天文衛星の観測データを駆使し、超新星残骸(SNR)の研究において大きな成果を挙げました。同氏の成果は(1)「チャンドラ」「XMM-ニュートン」両衛星の高い空間分解能を活かし、近傍のSNRの膨張率を世界に先駆けて測定し、SNRのダイナミクスを明らかにした、(2)SNRにおける爆発破片(エジェクタ)の詳細な分布を測定し、それらが非対称に飛散していることを観測的に発見した、(3)SNRから電荷交換反応(CX)によるX線が放射されていることを世界で初めて見つけた、といった多岐にわたる観測的研究から超新星残骸の進化を理解する上で鍵となる優れた成果を短期間に挙げました。

小林氏は、近年高度化してきた宇宙機において重要になってきた、情報処理を担う半導体集積回路LSIの新しい放射線障害であるSET(Single Event Transient)と呼ばれるパルスノイズに関して、その解明とモデル化の研究に取り組み大きな業績を挙げました。同氏は宇宙機用高性能LSIの試験開発を行うとともに、SETパルスノイズの物理的機構の理論的解明にも取り組みました。このように小林氏は、宇宙機用LSIにおいて新たな課題として登場した放射線パルスノイズに関して独創的で優れた研究を行い、現在では国内・海外で高く評価される成果を多数挙げ、すでにこの分野の先導的研究者として国際的にも広く知られています。

宇宙科学振興会は今回受賞された両氏がいっそう精進され、今後日本の宇宙科学推進の中心としてご活躍されることを期待しております。また、この宇宙科学奨励賞は当財団の大切な事業として今後も継続して発展させていく所存であります。本財団の当事業に対して皆さまのご支援を心よりお願い申し上げます。

(財団法人宇宙科学振興会 事務局長/長瀬文昭)

(左)勝田 哲氏、(右)小林 大輔氏