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ISASニュース

「ひので」が太陽面に大接近したラブジョイ彗星を捉えた

No.372(2012年3月)掲載

世界時間でちょうど2011年12月16日になったばかりのころ、軌道上で運用中のあらゆる太陽観測衛星は、普段観測している太陽現象でないものに注目し、望遠鏡を向けていた。「ひので」も北東側の太陽縁、そして北西側の太陽縁と視野を変えつつ撮像を行っていた。11月末にアマチュア天文家により発見された「ラブジョイ彗星」が、太陽面からわずか約14万km(0.2太陽半径)を通過すると予想されていたからだ。観測前は「本当に見えるかしら」と懐疑的な見方が大方だったが、「まさか捉えられたとは」と驚きに変わった。「ひので」の可視光磁場望遠鏡は、非常に明るい可視光太陽面と同時に、彗星の核と思われる小さく尾を引いた像を捉えていた(写真)。彗星は非常に明るい太陽面に比べ200倍程度面輝度が違うので、写真では彗星の明るさを強調してあるが、散乱光を抑えた設計のおかげで太陽面の至近距離でも彗星が捉えられた。X線望遠鏡は、接近後移動する彗星を、非常に淡いながらも軟X線で捉えている。

太陽接近時に熱で溶けて消滅すると思われていたが、接近後も彗星は生き残った。国際宇宙ステーションや南半球から、見事な長い尾を引いた彗星の美しい姿が撮影されている。

(清水敏文)

「ひので」が捉えたラブジョイ彗星と太陽面