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ISASニュース

第12回 宇宙科学シンポジウム開催される

No.371(2012年2月)掲載

宇宙科学シンポジウムを1月5、6日の2日間、相模原キャンパスで行いました。今回が12回目の開催に当たり、毎年、理学・工学両分野の研究者が集まり、宇宙科学について広く議論しています。このシンポジウムに参加すれば、日本の宇宙科学コミュニティの活動内容の全体像を知ることができるということで、新年早々に開催しているにもかかわらず、多くの方に参加していただいています。

今回の発表件数は325件(口頭42件、ポスター283件)で、2日間の延べ参加人数が676名でした。今年は、まだ年始休暇中の方が多くいるなど日程的な条件が悪く、また3日間の開催だった昨年度より規模は小さかったものの、盛大なシンポジウムになりました。年始早々からこれだけの人が集まり、宇宙科学について議論する。これも年始の年中行事のように定着してきたと思います。

今回の企画プログラムは盛りだくさんでした。初日午前の企画その1が、「『はやぶさ』から『はやぶさ2』へ」です。2010年、国民を沸かせた「はやぶさ」で得られた理学的成果を冷静に総括した後、次の小惑星探査機として計画されている「はやぶさ2」への展開を議論しました。初日の午後には、もう1つの企画として「今後の宇宙科学プログラムの実行のあり方」というセッションを組みました。宇宙科学の各コミュニティにおける将来展望を3名の有識者に語ってもらった後、パネルディスカッションを行いました。右肩下がりの世の中、ミッションコストの増大にもかかわらずミッション提案母体となるワーキンググループ数が増大しているなど、宇宙科学ミッションを取り巻く状況が変化している中、今後も各分野の科学コミュニティを維持しながら宇宙飛翔体による実験・観測機会を得るためにはどうあるべきかという点に関して、活発な議論が行われました。

今回は、初めての試みとして、NASAからの招待講演も行われました。当初は初日に予定していましたが、航空会社の都合で講演者の来日が1日遅れたため、シンポジウム前日にプログラムを再構成し、2日目の午前に実施しました。アメリカにおいても、日本と同様の提案型の宇宙科学ミッション選定の枠組みを有しており、NASAのMarc S. Allenに、このプロセスの本質をじっくりと説明してもらいました。また、それに対応する形で、宇宙研の中川貴雄先生に日本側のやり方を小型科学衛星に関して英語で説明していただき、日米双方で熱い質疑応答が交わされました。

今回は、開催前日のプログラム変更など、主催者受難の年でした。そのほかにも、遠方からお越しの講演者が悪天候により講演10分前にやっと相模原キャンパスに到着されるなど、冷や冷やさせられました。

私が世話人になった2年前からの状況を振り返ってみると、この3年間は、そのフォーマットに関して試行錯誤の連続だったように思えます。

2年前には、ポスター発表数が291件にまで増加し、2会場ではすべてのポスターを貼ることができないという事態になりました。そのため、初日と2日目でポスターを入れ替えるという策に出ました。昨年度からは、ポスターの第3会場として1階のロビーも追加し、ポスター件数はほぼ同一ながらも、ポスターを貼り替える必要はなくなりました。ただし、ロビーの展示物の一部を移動させなければならないため、設営と片付けの手間は増えました。移動させなければならない展示物には、頑丈な台車に載った衛星模型があり、玄関の段差を乗り越えるのに苦労させられました。

昨年度は、口頭発表件数の増加にも頭を悩ませ、結果として3日間で開催しました。今年度は、さすがに3日間は長過ぎたという反省から、2日間に戻しました。しかし、多くの口頭発表をこなすためには、1件の講演時間の割り当てを15分にせざるを得ませんでした。そのような主催者側からの無謀な要求にもかかわらず、講演者の方々には、短時間ながらも要点を押さえた分かりやすい発表をしていただいたことを感謝致します。

結果としては、このシンポジウムに参加することで、日本の宇宙科学の現状と将来展望が把握できる濃厚なプログラムを提供できたと自負しております。これも、宇宙科学への関心が非常に高いことの表れで、主催者側の悩みは尽きませんが、非常に喜ばしい事態です。

(宇宙科学シンポジウム世話人代表 吉光徹雄、世話人:岡田達明、徳留真一郎、川田光伸)

初日のパネルディスカッションの様子