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ISASニュース

小型科学衛星1号機(SPRINT-A)の一次噛合せ試験

No.371(2012年2月)掲載

小型科学衛星1号機(SPRINT-A)は、極端紫外線により地球周回軌道から金星や火星、木星などを観測する世界で最初の惑星観測用の宇宙望遠鏡衛星です。2013年にイプシロンロケットの初号機にて、内之浦宇宙空間観測所より打ち上げられます。また、SPRINT-Aは小型科学衛星シリーズの初号機であり、開発中の小型科学衛星標準バスを用いた最初の科学衛星となります。初物ずくめの打上げになるため、関係者一同気を引き締めて開発に当たっています。

SPRINT-Aのフライトモデル(FM)を用いた一次噛合せ試験が、1月より飛翔体環境試験棟のクリーンルーム内で開始されました。試験の目的は、電気的および機械的インターフェースの確認です。これに先立ち昨年12月末までに、従来の地上試験系が小型科学衛星シリーズで採用するSバンド高速通信に対応した新しい地上試験系に換装されています。

SPRINT-Aは標準バス部とミッション部から構成されますが、現在は標準バス部の電気試験を、衛星の形に組み上げる前の状態で行っています。この標準バスは小型科学衛星シリーズを通じて共通的に使用されるため、実施中の試験はSPRINT-Aのみならずシリーズ衛星にとって非常に重要な位置付けとなります。

バス部電気試験と並行して、2月中旬からはミッション部電気試験が始まります。その後、バス部とミッション部が電気的に接続され衛星全体の電気試験が行われます。小型科学衛星シリーズの特徴として、バス部とミッション部は主として電源ラインと「SpaceWire(スペースワイヤー)」というデータラインのみで接続されます。分かりやすく例えるなら、PC(衛星バス部)、とwebカメラ(ミッション部)をUSBケーブル1本で接続するようなイメージです。接続が単純であるため、組み立て直前までバス部、ミッション部それぞれ単独での試験が可能になるというメリットがあります。

電気試験が終了すると、3月ごろに機械噛合せとして、いよいよSPRINT-Aの姿に組み上げられます。この状態で再び電気試験を実施し、問題がなければ衛星を分解し一次噛合せ試験が終了します。各搭載機器は、単体での環境試験と性能試験を行い、夏ごろに再集結してFM総合試験を開始することになります。

(中谷幸司)

SPRINT-Aの一次噛合せ試験の様子