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ISASニュース

宇宙科学研究所における研究系の再編

No.371(2012年2月)掲載

宇宙科学研究所の教育職員は、その研究分野ごとに13の研究系に分かれて所属していましたが、2012年2月1日をもって、5つの研究系に再編されました。

研究系の再編検討が始まったのは2年前の初春です。宇宙研外部の有識者によって組織された宇宙科学研究推進検討委員会において、今後の宇宙科学をどのように進めるべきかの議論がなされ、提言の1つとして「新分野を取り込み、視野の広い運営を行う」必要性が指摘されました。そのためには「研究系再編」の検討が必要ではないかと考えられたため、小野田淳次郎所長から中村に検討チームを組織するように指示が下り、各研究分野から8名のメンバーが集まって検討を開始しました。

宇宙研は、全国の大学が共同で利用する「大学共同利用機関」として1981年に誕生しました。2003年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)として統合した後も、大学共同利用の機能を持たせることが、宇宙航空研究開発機構法に規定されています。宇宙研の運営方針は、大学などの研究者によって構成される学術コミュニティの代表(評議会、運営協議会)によって決定されますが、コミュニティの意思や要請は時代とともに変化するものです。例えば、宇宙天文学分野において、観測手段はいろいろ変わってきます。X線天文学研究系、赤外線天文学研究系と細分化されていては、研究者の流動性に欠き、また重力波天文学など新しい分野への対応が難しくなります。そこで、現在より大きな研究系に再編することにしました。

一方で、研究分野によって対応する学術コミュニティも、研究の進め方も異なります。そこで、「コミュニティとの親和性」が不可欠であると考え、対応する学会や大学の学科などを念頭に置き、2つの理学系の研究系、2つの工学系の研究系、1つの学際的研究系の5つに再編することにしました。各研究系の守備範囲が広がったことにより、隣接新分野の取り込みが容易となります。また、まったく新規の分野については学際科学研究系で立ち上がることを期待しています。さらに、それぞれの分野において蓄積された経験を共有して、より挑戦的、あるいは機動的なミッションを立ち上げる体制が整備されると考えています。

もちろん研究系の形を整えただけでよいわけではなく、本質的には宇宙研に所属する教育職員の資質および意識の向上が求められます。大研究系に所属することで、研究者に広い視野が培われ、各研究系の在り方に対する深い洞察が生まれることを期待しています。同時に、コミュニティあっての宇宙研ですので、今後もご意見を反映しながら改善に努めたいと思います。

今回の再編をきっかけに宇宙研の活動がより活発になることを期待しています。宇宙研を見守っておられる方々にも、ご理解いただきたいと思います。

(研究系再編検討チーム長・研究総主幹 中村正人)