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ISASニュース

ASTRO-G計画の終了について

No.370(2012年1月)掲載

ASTRO-Gは、第25号科学衛星としてH-UAロケットで打ち上げられる予定のスペースVLBI電波天文衛星計画でした。スペースVLBIは、電波望遠鏡衛星が地上の電波望遠鏡と協力して観測することにより、巨大なパラボラアンテナと等価な高い解像度の画像を得る観測方法です。

ASTRO-Gは、2012年度の打上げを目指して開発を行っていましたが、2009年1月時点でミッション実現の中核である高精度展開アンテナの技術課題などが明らかになったため、プロジェクトを休止して技術課題の検討および成立性の検証を行ってきました。

約1年半にわたる検討の結果、現在達成可能なアンテナ鏡面精度ではサイエンスの重要な部分が達成できないこと、サイエンス目標を達成可能な範囲に縮退したとしても当初を大きく上回る資金と期間が必要であること、などが明らかになりました。JAXAおよび宇宙開発委員会における議論を経た結果、2011年12月にASTRO-G計画の中止が決定されました。なお、中止に至る議論については、文部科学省宇宙開発委員会のホームページにおいて公開されています。

ASTRO-Gに対してご努力、ご支援いただいた皆さま、関係各所の方々には、最後までプロジェクトを進めることができず大変申し訳なく思います。長年にわたりご協力ありがとうございました。

ASTRO-G計画は道半ばで終了となってしまいましたが、ASTRO-Gで目指していた観測は現在あるほかのプロジェクトでは実現できる見通しはありません。ASTRO-Gの目指した、ブラックホールの周辺領域など多くの謎に満ちた天体を超高空間分解能で探りその構造を明らかにするという科学は、依然として意義があります。今後、宇宙の謎を解くためには、ASTRO-Gのような観測装置が必要なのです。今回の反省点をしっかりと受け止め、世界をリードし天文学の発展に大きく貢献するような、より素晴らしい電波天文ミッションを提案すべく、関連研究者間で厳しい議論が始まっています。

(村田泰宏)