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ISASニュース

古川宇宙飛行士のISS長期滞在無事終了

No.370(2012年1月)掲載

2011年11月22日、国際宇宙ステーション(ISS)に約5ヶ月半滞在した古川聡宇宙飛行士が、地球に無事帰還しました。初飛行での長期滞在でしたが、宇宙医学実験支援システムの機能検証や、心電図計測、皮膚の微生物の採取、毛髪採取などの医学実験、キュウリ芽生えの形態形成に関わるタンパク質の局在を調べる実験、流体実験のサンプル部交換、温度勾配炉のチェックアウトなど、多種多様な実験関連作業を精力的にこなしました。一般から公募した「宇宙医学にチャレンジ」「宇宙ふしぎ実験」、そしてハイビジョンカメラでの地球撮影や広報イベントなども実施しました。医者ならではの視点から、宇宙酔いや帰還後の体の重力への順応の過程をリアルにツイッターで発信したのも画期的でした。

ところで、宇宙飛行士の労働時間は、5分単位でスケジュール管理されていることをご存知でしょうか? アメリカ・ヨーロッパ・カナダ・日本の担当者が、何ヶ月も前から、その期間に実施される実験関連の作業やISS本体の保守作業などをリストアップし、必要時間を算定してスケジュールを立てます。実施時期が近くなってくると、実験の優先度や研究チームからの実施希望日の要求に基づいてさらに詳細なスケジュールを作成するのです。日本の割当時間は、費用負担に対応する形で、ロシア人を除く宇宙飛行士全員の労働時間の12.8%と国際協定で決まっています。この範囲内でできる限り多くの作業を効率よく行ってもらうべく、事前の訓練や、分かりやすい手順書の作成が重要となります。また、古川飛行士は日本の実験だけを行うわけではないので、各国による労働時間の取り合いとなることもしょっちゅうです。この調整作業を行うために、連日、夜中の電話会議が行われています。

非常に忙しい5ヶ月半をいつも笑顔で、時には土曜日の作業もボランティアで実施してくれた古川飛行士。しばらくはゆっくり休んで、温かいお風呂やおいしい和食を楽しんでいただきたいと思います。

(吉崎 泉)

帰還直後、笑顔の古川飛行士。