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ISASニュース

観測ロケットS-310-40号機打上げ成功

No.370(2012年1月)掲載

中波・長波帯電波の異常な伝搬を引き起こすような電離圏の異常な電子密度構造の発生メカニズムの解明を目的とした観測ロケットS-310-40号機の打上げが、2011年12月19日夜に内之浦宇宙空間観測所にて行われました。この観測ロケット実験の目的や方法については『ISASニュース』2011年12月号に掲載されていますので、そちらをご参照いただくとして、本稿ではフライトオペレーションの模様についてお伝えします。

内之浦での観測ロケット打上げは1年4ヶ月ぶりとなりました。これは諸般の事情によりスケジュールが延期を重ね、夏から秋へ、秋から冬へと変更になったためです。内之浦の関係者は首を長くして待っていたことでしょう。というわけで、全体打ち合わせは遅れたことの関係者へのおわびから始まりました。

観測ロケットのフライトオペレーションも最近は宇宙研以外の本部からの研修者や大学関係のPI(搭載観測機器)班としての参加者が多く、全体打ち合わせを管理棟会議室で行うと後ろの席までいっぱいになります。科学衛星の打上げ機会の少ない昨今、小型であっても噛合せやフライトオペレーションに参加してもらうことは、参加者が実機で経験を積むことができる、対外的には観測ロケット実験の存在をアピールできるという意味でよいことだと思っています。

12月号にも書いた通り、今号機から共通系として新アビオニクス(搭載電気系)を更新することに伴い、今までにはなかった作業が追加になりました。従来、頭胴部単独での搭載機器チェックは頭胴部組立て室で行うものが最終でしたが、今回は新アビオニクスと内之浦の射場にある地上支援装置(GSE)を組み合わせての試験が初めてであったため、大きな後戻りを防ぐため全段結合してのチェックに先立って頭胴部のみを射点に持ち込んでのチェックを実施しました。大きなドームに頭胴部だけがそっと置かれた風景は、何ともいえないつつましさがありました。射点チェックではきっと何か起こるに違いない、という大方の予想を裏切り、大きなトラブルもなく試験を終えたことは、スケジュールキープに多大な貢献があったと感じています。

今号機は、異常な電子密度構造の発生を地上観測による受信電波強度の変化から見極めてロケットを打ち上げる、いわゆる条件待ちの実験でした。打上げウインドー初日、23時0分からしばらく条件が出現せず、30分ほど経過すると実験班員に沈滞ムードが出始めていました。その直後、電波強度チェックを行う富山県立大学の石坂圭吾さんの目が輝き、笑顔が見え始めました。しばらくデータを見続けて、これならいけるとGOのサイン。カウントダウンを再開しようとあらためてセットした打上げ時刻は23時48分。これは、その日の打上げウインドー終了時刻の2分前です。首尾よく現象は継続し、ロケットは高電子密度の領域を期待通りに飛翔したのでした。詳しい報告は別の機会に譲りますが、すべての測定器が良好なデータを取得し、成功裏に終了したことをお伝えします。

最後となりましたが、本ロケット実験の実施に当たりご協力いただいた関係各署の方々にこの場を借りてお礼申し上げます。

(阿部琢美)

ドームの中でランチャーの横に置かれたロケット頭胴部