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ISASニュース

「あかり」が捉えた宇宙最初の星の光

No.368(2011年11月)掲載

赤外線天文衛星「あかり」が宇宙最初の星からの光を検出したという研究成果が10月21日にプレスリリースされ、新聞各紙、インターネットニュースなどにも取り上げられました。

宇宙研の赤外・サブミリ波天文学研究系では、ロケットや人工衛星を用いて宇宙初期の研究を行っています。点源としては検出できない遠方天体からの光をまとめて「背景放射(空の明るさ)」として精密観測することで、「宇宙の暗黒時代」と呼ばれるビッグバンから約3億年の宇宙での「第一世代天体(宇宙最初の星)」形成の様子を探ろうという研究です(新しいウィンドウが開きます http://www.ir.isas.jaxa.jp/~matsuura/darkage/index_da.html)。

今回、松本敏雄宇宙研名誉教授をはじめとする日韓共同チームは、「あかり」搭載近赤外線カメラ(IRC)で、りゅう座方向を半年にわたって精密観測しました。その結果、個々に見分けられる銀河の背景にある空の明るさが、場所により異なることを見いだしました(図)。この明るさの揺らぎは既知の放射成分(黄道光、銀河系内の光など)では説明できず、宇宙最初の星々からの光を検出したと結論づけられました。観測された揺らぎの角度スケールは現在の宇宙の大規模構造に相当する大きさで、第一世代天体が暗黒物質の高密度領域で形成されたという理論予測とも一致します。過去の類似の観測では明確な結論が得られておらず、宇宙初期の大規模構造を画像として直接的に示したのは「あかり」が初めてです。今回の観測は、第一世代天体の形成と進化、大規模構造の形成などの暗黒時代研究に大きな影響を与える極めて重要な成果です。

(村上 浩)

「あかり」が観測した、りゅう座方向の背景放射の揺らぎ。画像の直径は10分角。