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ISASニュース

活動的な太陽の探索
第5回「ひので」国際シンポジウム

No.368(2011年11月)掲載

今回で第5回目となる「ひので」科学会議(Hinode-5)は、米国スミソニアン天体物理観測所(SAO)が主催して、米国マサチューセッツ州のケンブリッジにあるRoyal Sonesta Hotelにおいて10月10〜15日の6日間にわたって開催されました。遠方ではありましたが日本からも数多くの研究者が参加し、会議には世界中から170名ほどの太陽研究者が集まりました。10件以上の招待講演と30件以上の基調講演、そして100件以上のポスター発表があり、大盛況の会議でした。研究発表にムービーが多用される太陽研究ならではの電子ポスター発表(e-poster)も行われ、短時間で劇的に変化する太陽のムービーの前で活発な議論が繰り広げられていました。

「ひので」は太陽活動が極小期に向かっていた2006年に打ち上がり、観測期間のほとんどが太陽活動極小期中であったため、今までは太陽の静穏領域の観測データを用いた研究が数多く行われてきました。しかし、数年前に新しい太陽活動周期に入り、最近では数年後の極大期に向けて、太陽活動も活発になってきました。活動領域(黒点)や太陽フレアなどの活動的な太陽の姿が数多く観測されるようになり、それらの研究もまた行われるようになってきました。そこで今回の会議では、“Exploring the Active Sun”という副題のもと、活動的になってきた太陽の観測データを用いた研究についても数多くの報告がされました。

「ひので」も打上げから5年がたち、観測データも膨大な量になっています。長期間の観測データを用いた統計的な研究や、太陽の長期変動に関する研究などの、時間のかかる研究についてもその成果が発表され、長期間運用による成果が出てきているのも今回の会議の特徴でした。また、「ひので」の後に打ち上がったSolar Dynamics Observatory(SDO)などの衛星や地上観測との比較研究も活発に行われ、シミュレーションモデルと観測との比較による詳細研究や、研究室実験による物理素過程に関する研究と太陽観測との比較についても報告があり、太陽プラズマの研究が成熟期を迎えているように感じました。

「ひので」だけでなく、日本の次期太陽観測衛星計画SOLAR-Cにも注目が集まっており、日本が率いていく太陽研究は、これからも世界中から期待されていくのだと感じました。

(渡邉恭子)

シンポジウム会場にて